【目的】 HCVは種々の病態を引き起こす。口腔扁平苔癬(OLP)や口腔扁平上皮癌(OSCC)もその1つである。私たちは、OLPとウイルス側因子、OLP・OSCC内のHCV RNA増殖、IFN治療とOLP、IFN治療後のOLP長期予後症例における組織内HCV RNAと臨床病理学的検討、HCV高浸淫地区におけるOLPの疫学等を明らかにした。本研究では、case control studyによりOLP発症リスク、HCV core変異、ISDR変異を検討した。 【方法】方法1:2010年2月~2011年6月までに口腔疾患領域の異常を主訴に当病院を受診した全患者226名のうちOLPを認めた59名(グループ1A)と、性と年齢を一致させた九州X町の正常口腔粘膜を有する住民85名(グループ1B)についてcase control studyを行なった。方法2:上記226名のちHCV core aa70/91変異、ISDR変異を測定したIFN治療歴のある19名をOLP12名(グループ2A)とOLPなし7名(グループ2B)で比較した。 【成績】グループ1AにおけるHCV抗体並びにHCV RNA陽性率は67.80%・59.32%、グループ1Bでは31.76%・16.47%(各々P<0.0001)。多変量解析によるOLPの発症リスク因子は、HCV持続感染、低アルブミン血症、喫煙歴であった(各オッズ比は6.58、3.53、2.58)。グループ2A・2B間においてHCV core aa70/91変異、ISDR変異に有意差はなかった。 【結論】OLPの発症にウイルス変異は影響しない。IFN治療後、臨床病理学的にOLPが完全に消失しても組織内からHCV RNAが検出されることから、発症には宿主の免疫応答が密接に関与する。歯科医師と肝臓専門医との医療連携が望まれる (BMC Gastroenterol 2012)。
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