研究概要 |
本年度は,1)日本産蜂蜜の皮膚全層欠損創への効果の検討,2)雌マウスを用いて,加齢とエストロゲンが皮膚全層欠損創におよぼす効果の検討,3)日本産蜂蜜の皮膚火傷への効果の検討を行った. 1)日本産蜂蜜(アカシア,レンゲ,そば)の皮膚全層欠損創傷治癒への効果:ハイドロコロイド被覆材は炎症期に創面積の拡大が見られ,その後急激に創は収縮し瘢痕化した.創作製後14日の創面積は最初の創面積の0.38倍ぐらいになった.一方,日本産蜂蜜は炎症期に創面積は拡大せずに,徐々に創は縮小し瘢痕化したが,ハイドロコロイド被覆材を用いた面積と比べると,やや大きな瘢痕を形成した.すなわち,炎症期に蜂蜜で被覆し,肉芽形成期からはハイドロコロイドで被覆すると創は奇麗に早く治癒するという結果が得られた. 2)雌マウスを用いて,加齢とエストロゲンが皮膚創傷全層欠損創治癒へおよぼす研究:24週令と40週令のマウスでは,40週令の創の治癒が24週令よりも遅れていた.卵巣摘出後の創傷治癒の早さを比較すると,40週令と24週令の創の治癒はほぼ同じであった.卵巣摘出後にエストロゲンを毎日と塗布した場合には,両週令共に,エストロゲンの効果が見られ創傷治癒は促進した.しかし,40週令では,卵巣切除と正常なマウスの創傷はほぼ同じように治癒したので,雌においてはエストロゲンのみならず加齢の創傷治癒への影響が大きいことが示唆されたのは,重要な成果であった. 3)日本産蜂蜜の皮膚火傷への効果:マウスを用いて皮膚火傷の安定した作製ができるようになった.日本産蜂蜜の効果は,今年度検討する.
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今後の研究の推進方策 |
1.エストロゲンの効果を創の組織学的かつ生化学的方法を用いて明らかにしていく. 2.日本産蜂蜜とハイドロコロイドドレッシング材の併用での創傷治癒が促進するかどうかを検討する. 3.皮膚熱傷創治癒に蜂蜜が効果あるかどうかの研究は,マウスの皮膚が薄いためにかなり困難であることが判明したが,安定した皮膚の火傷を作製することができるようになった.今年度は,日本産蜂蜜の火傷の治癒効果を検討することを進めていく.
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