研究課題/領域番号 |
22592364
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
上野 栄一 福井大学, 医学部, 教授 (60262507)
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キーワード | 看護学生 / コミュニケーション / 自律神経系 / 治療的技法 / 非治療的技法 / 交感神経系 / 副交感神経系 |
研究概要 |
本研究では、治療的コミュニケーション技法と非治療的コミュニケーション技法がどのように対象者に影響を与えるかについて、明らかにすることを目的としている。前年度の研究結果では、看護学生を対象に治療的技法と非治療的技法の場面にどのように反応するかについて、VASおよび感情評価尺度(POMS)にて、その特徴を明らかにした。本研究から治療的技法は非治療的技法よりも感情を快の方向に向かわせることが示唆されたことを受け、平成23年度は、治療的技法を用いた場合と非治療的技法を用いた場合の心拍数、交感神経、副交換神経系の変動の測定を行った。具体的には看護学生152名の中から同意の得られた114名の対象者に対して、『こころの揺らぎリアルタイム解析装置』(交感神経系と副交感神経系の評価)を用いて話し手の治療的技法を用いた場合の変動と非治療的技法を用いた場合の聞き手の交感神経機能及び副交感神経機能の変動について調べた。 全体的な評価として、統計処理の結果、話し手が非治療的技法を用いた場合の聞き手の群の心拍数は、治療的技法を用いた場合の心拍数よりも有意に高い値を示した。また、交感神経機能(LF/HF)についても話し手が非治療的技法を用いた聞き手の群の値は、話し手が治療的技法を用いた聞き手の群の値(LF/HF)は有意に高い値を示した。これらの結果からは、話し手のコミュニケーション技法の種類によって、聞き手の自律神経に有意な影響を与えることが明らかになった。また、話し手の性別の違いによる聞き手の自律神経系に及ぼす影響では、心拍数において女性が治療的技法を用いた場合と男性が治療的技法を用いる場合とでは聞き手に有意に影響を与えていた。また、交感神経機能においても、話し手の性別の違いにより聞き手に影響を与えていた。本研究では治療的コミュニケーション技法と非治療的コミュニケーション技法を用いることによる看護学生との主観的評価と客観的評価の比較、看護学生の学年間の主観的評価と客観的評価の比較、全対象者の主観的評価と客観的評価について総合的に評価をすることを目的としており、全解析結果は、平成24年度にまとめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実施については、前もって前年度に入念な計画を立て、準備を早く進めた結果、すぐに調査を開始することができた。また、調査に用いる調査用紙についてあらかじめ準備をしておいた。さらに研究協力者及び対象施設とも入念な研究の打ち合わせをしてきた。これらの準備によってスムーズに研究調査を進めることができた。統計処理についても順次進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得たデータについて、総合的に統計処理する。統計処理内容は、コミュニケーション技法の種類(治療的技法と非治療的技伝)の違いによるPOMSおよび自律神経系の解析(心拍変動スペクトル解析)を行う。心拍変動スペクトル解析には,技法を用いた時点を基準点として、10秒後、20秒後、30秒後、40秒後、50秒後、60秒後、会話の終了時点での心拍数、HF/LFの分析をおこなう。解析終了後は、報告書の作成を実施する。また、研究成果について学会で公表する予定である。
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