本研究は、看護系大学の学生を対象に、話し手としての看護学生のコミュニケーションの治療的技法を用いた場合と非治療的技法を用いた場合の聞き手への自律神経系及び感情に与える影響について明らかにすることを目的とした。 本研究を進めるにあたり、話し手が治療的技法を用いた場合の受け手の主観的評価と客観的評価について、POMS、VAS、心拍ゆらぎリアルタイム解析システム(HF、LF、LF/HF、心拍数を測定)、快度測定(VAS)を用いた。分析対象は4看護系大学の学生120名を対象に有効データの得られた101名を分析対象とした。結果、治療的技法を用いた場合の対象者の快度は非治療的技法を用いた群よりも有意に高い値を示した。また、感情評価では治療的技法を用いたPOMSの「抑うつ」「活気」「怒り」「疲労」「緊張」「混乱」及びTMDが非治療的技法を用いた場合より有意に低い値を示し、「活動」に関しては、治療的技法を用いた場合は非治療的技法を用いた場合よりも高い値を示した。 自律神経系非治療的技法を用いた場合のLF/HFは、治療的技法を用いたよりも有意に高くなっていた。心拍数でも、非治療的技法を用いた場合は有意に増加していた。感情評価では、治療的技法を用いた場合と非治療的技法を用いた場合では、下位概念「抑うつ」「活気」「怒り」「疲労」「緊張」「混乱」の得点に有意な差がみられた。以上のことから、話し手が治療的技法を用いた場合と非治療的技法を用いた場合とでは自律神経系と感情には明らかな違いがみられた。 以上のことから、治療的技法を用いることで,快度が増加し、不安感などが軽減し、信頼関係の構築に有用であることが示唆され、また、本研究結果からは、生理的・心理的にも治療的技法を用いることはリラクセーション効果にも有効であることが示唆された。
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