看護のコミュニケーションのあり方として、共感的態度で対象者の話を聞くなど、共感的コミュニケーションの重要性が注目されてきた。しかし、共感的態度の定義が難しく、また、具体的なコミュニケーション方法としての共感的態度の明確化が現在までも確立されていない。人間的コミュニケーションは共感的態度の1つの方法であると言われており、人間的コミュニケーションを分析することで、共感的態度の明確化につなげられる可能性があると考えられる。 また、近年の若者は、インターネットやメディアから発信される一方通行のコミュニケーションにあふれた世界で成長してきているため、直接他者と一対一で関わるインターパーソナル・コミュニケーションを持つ能力が低いと言われている。特に日本の若者は、感情表現能力に乏しく、相手に自らの感情を的確に伝えられない傾向にある。この傾向は、看護学生でも同様で、臨床実習における大きな課題は、患者との一対一のインターパーソナル・コミュニケーション形成が難しいことにある。一方、米国では看護師をはじめとする医療職者は、対象者のニーズに的確に答えるための、コミュニケーション能力育成に早くから注目し実践してきた。日本においても、看護学生のコミュニケーション能力を育成し、人間的コミュニケーションを築くことが出来る看護師を養成していくことは非常に重要である。 この研究では、直接的な観察を行うことにより学生がどのようにコミュニケーション形態を選択しているかを良く理解することができた。他の研究において、人間が共感を持っているものに反応する場合とわずかに持っている又は全く持っていないものに反応する場合とでは脳の活性化される領域が違うということが示されている。このことから他人に対する共感を育むことが看護学生のコミュニケーションの選択に関して多大な好影響を与えると考えられる。
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