研究課題/領域番号 |
22592367
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
酒井 明子 福井大学, 医学部, 教授 (30303366)
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研究分担者 |
磯見 智恵 京都橘大学, 看護学部, 准教授 (40334841)
月田 佳寿美 福井大学, 医学部, 准教授 (50303368)
繁田 里美 福井大学, 医学部, 准教授 (20446165)
麻生 佳愛 福井大学, 医学部, 講師 (80362036)
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キーワード | 災害 / 災害看護 / 災害初期 / 災害中長期 / 心理的支援 / 被災者 / 支援者 |
研究概要 |
平成23年度は、被災者および援助者の中長期的な心理的変化の現状及びニーズを明らかにすることを目的とした。東日本大震災(2011)により甚大な被害を受けた岩手県(陸前高田市)宮城県(南三陸)福島県(郡山市)の仮設住宅の被災者および病院・在宅支援を行ってきた支援者を対象とし、発災後1年間の心理変化と要因を調査した。被災者の災害発生直後から現在までの心理的変化のラインは5つのパターンが示された。震災直後の高い反応は2~3ヶ月後に下降し始めており、仮設住宅への入居など住環境の変化が影響していた。また、一度下降後再上昇の時期は6日~5ヶ月後であり、物心両面での喪失体験が個々の背景で異なっていることや災害後の時間的経過に伴う心理の回復過程の違いなどが推測された。また、発災1年後安定レベルに戻っていないことから、今後もストレスが慢性化するなど精神的な二次災害を視野に入れた支援体制の必要性が示唆された。被災者の心理変化に影響する要因として247コードが得られ、22のサブカテゴリーに分類された。さらに、意味の類似性から【自分を支えてくれる家族、友人、仲間(被災者)の存在】【未来への希望と見通しのつかなさ】【やりがい感と喪失】【やむを得ない仮住まいでの生活体験】【体調の変化と医療者からの支援】【愛着のある土地や住居の喪失】【情報不足や情報の真実性の欠如】の7つのカテゴリーに分類された。心理に及ぼす要因を丁寧にアセスメントし、揺れ動く複雑な心理に配慮した支援の在り方の必要性が示唆された。被災した支援者の心理変化に影響する要因には、生きるか死ぬかの決断や死別や住居の喪失、対応能力を超える活動など、緊急的で長期的かつ不確かな問題への対処など社会や個人の葛藤が含まれる一方で、心身が癒される体験もあった。被災者と支援者という二重の役割をもつ支援者の心理に配慮した支援の在り方と課題が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災(2011)の発生により、被災地における災害発生後の中長期的な心理的変化および環境要因調査の必要性が高まった。1年間継続的に被災地での支援活動を継続し、心理の変化の特徴パターンや要因の分析や変化の時期ごとのニーズと支援の実際との関連を分析することができた。また、調査で得られた心理的要因をもとに、被災地および被災者の自立を考慮し、地域力を活用した実際的で効果的な心理教育の在り方を検討する基礎資料を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策としては、調査で得られた心理的要因をもとに、被災地および被災者の自立を考慮し、地域力を活用した実際的で効果的な心理教育を地域の人々との協働で企画・実施評価し、その効果を検証することにある。しかし、東日本大震災での調査結果では、揺れ動く複雑な心理には地域差・個人の体験さが確認され、今後もストレスが慢性化するなど精神的な二次災害を視野に入れた支援体制の必要性が示唆された。被災地のニーズに沿った心理教育および支援体制は地域の住民と支援者とで十分に話し合い研修企画する必要性がある。
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