研究概要 |
本研究の目的は,(1)新卒看護師がみる理想と現実の職場環境の差と(2)新卒看護師の看護実践能力と職場で求められる看護実践能力の差が,就職後1年間でどのように変化し,またこれらの差がどのように離職願望の強さと関連し-ているかを調査することである.平成23年度は,質問調査法を用いて,新卒看護師の自己評価による看護実践能力と職場で求められていると感じている実践能力の程度,新卒看護師が職場に求めている特性(良い人間関係や成長の機会など)と現実の特性,及び離職意思を,3カ月ごとに調査した. 調査対象となった新卒看護師は,H県内の5医療施設に新規採用となった新卒看護師279名である.その内,卒後3ヶ月目調査では150名,6ヶ月目調査では109名,9カ月目調査では102名,そして12ヶ月目調査では92名の新卒看護師から回答を得た.また,全ての調査に参加した新卒看護師は59名,3回の調査に参加した者は37名,2回参加は26名,そして1回のみ参加した者は54名であった. 研究目的に基づいた詳細な分析は,平成24年度に実施予定であるが,基礎統計を用いた研究結果の概要は以下のとおりである. ●新卒看護師がみる理想と現実の職場環境得点の差は,新卒看護師の離職意思得点と正の相関関係にあった。しかし、新卒看護師が見る理想と現実の職場環境得点と離職意思得点との関係を個別にみると、現実の職場環境得点だけが、新卒看護師の離職意思に貢献している事が判明した。 ●新卒看護師が自己評価する看護実践能力得点と彼・彼女らが職場で求められていると感じている看護実践能力得点の差は、彼・彼女らの離職願望得点と正の相関関係を示した(ただし,卒後9・12ヶ月調査のみ).しかし,新卒看護師の看護実践能力,彼・彼女らが職場で求められていると感じている看護実践能力,及び離職意思得点との関係を個別にみると、新卒看護師の看護実践能力だけが,彼・彼女らの離職意思に貢献している事が判明した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,前年度に得た縦断研究結果を,研究目的に沿ってより詳細に分析する.そして,研究結果を基に,新卒看護師の職場適応及び離職頚眼を図るための方法を考察する.データ収集ほすでに終了しているため,研究計画の変更や,遂行上の問題点が発生する危険はないと考えられる。
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