目的:本研究の目的は,新卒看護師が自己の能力水準(能力)と職場で要求されていると感じる能力(要求),そして業務に関連する自己の欲求と職場環境から与えられる供給(自己の欲求を実現できる機会)を3ヵ月ごとに調査し,新卒看護師が認知する要求-能力間及び供給-欲求間の適合・不適合の経時的変化を検証することであった。更に,本研究の目的は,上記不適合に対する認識が,新卒看護師の離職意思にどのような影響を与えうるかを調査することであった。方法:研究対象者は,2011年3月に看護師養成学校を卒業し,中国地方の5病院に入職した新卒看護師279名とした。データ収集には自記式質問紙調査方法を用い,入職(2011年4月)3,6,9,12ヵ月目に質問紙を送付した。データ分析には,重回帰分析を用いた。結果:合計で176名の新卒看護師が,1回以上調査に参加し,62名の新卒看護師は4回全ての調査に参加した。分析の結果,新卒看護師は,要求-能力間不適合を認知している事が明らかになった。しかし,新卒看護師の看護実践能力自己評価は,勤務期間が長くなるにつれ改善し,入職1年目の終わりには,不適合度も縮小した。また,新卒看護師は,供給-欲求間の不適合も認知していたが,この不適合は縮小されなかった。更に,新卒看護師の離職意思には,彼・彼女らの看護実践能力自己評価と,職場環境評価が関連していることが確認された。そして入職3~9ヵ月目は,新卒看護師の職場環境評価が,入職12ヵ月目には看護実践能力自己評価が彼・彼女らの離職意思に大きな影響を与えていたことが明らかになった。考察:新卒看護師の離職意思を軽減するためには,新卒看護師の実践能力を高め,彼・彼女らの看護実践不安を軽減できるようなプログラムの導入が必要である。また,彼・彼女らの学習が促進されるような支持的な職場環境を提供することも,新卒看護師の離職防止には必要である。
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