研究課題
本研究の目的は、看護学部と病院の人材育成連携活動の長期的・組織的影響を評価する概念枠組みと評価指標を検討した上で効果的な継続教育プログラムを開発することである。平成22年度は、3年間にわたる本看護学部と病院の人材育成連携活動における相互影響を分析するとともに、評価枠組みと成果指標について文献検討を行った。本看護学部は、平成19年度より地域の中小規模病院と人材育成連携活動を開始した。主な活動内容は、研究支援、及び看護過程・カンファレンス他に関する講義・OJT (on-the-job-training)等の研修であった。看護学部と病院の相互影響を検討するため、(1)連携病院の看護師への質問紙調査、(2)看護過程・カンファレンス研修の参加者への記録調査、及び(3)看護学部と病院の連携活動参加者への面接調査を実施した。分析結果から、人材育成連携活動によって看護実践能力の基盤となる批判的思考力が向上することが示唆された。また批判的思考力の向上によって、普段の看護実践における新たな問題発見と解決法の考案が導かれる傾向がみられた。したがって、人材育成連携活動は、看護師の思考過程の洗練を通じて看護実践能力の向上に寄与することが示唆された。しかし、こうした看護師個人の成果がチームや組織に与えた影響、ならびに教員の看護実践力や教育力に与えた影響については、ほとんど認識されていなかった。看護師個人の成果が看護チームへと熟成されるプロセスとその促進要因、及び大学・病院のユニフィケーションの評価指標は確立しておらず、今後は簡便で信頼性・妥当性のある指標を明らかにする必要がある。次年度は、看護師個人の成果をチームの成果へと紡ぎ上げるプロセスを視野に入れた長期的な人材育成連携活動を捉えた概念枠組みに沿って、チーム・プロセスを促進する人材育成プログラムの開発をめざす。
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