本研究の目的は、看護学部と病院の人材育成連携活動の長期的・組織的影響を評価する概念枠組みと評価指標を検討した上で効果的な継続教育プログラムを開発することである。 A大学看護学部が市中病院と実施した人材育成連携活動の評価から明らかになった課題は、看護師個人の成果をチームの成果へと紡ぎ上げるチーム・プロセスが組織の成果を左右することであった。 これまで人材育成は「個人の成長」を目標に教育が計画されてきたが、近年ではチームに焦点化した教育が重要視され、効果的なチーム・プロセスを体験できる研修づくりが課題となっている。チーム・プロセスの中心はメンバー間のコミュニケーションであるが、個人とチームが保有する知識・技術・経験、及び認識の枠組みなど様々な要素が相互作用してチーム独自のパターンを形成する。こうした組織の土壌的側面ともいえるチーム・プロセスを促進するには、メンバー自身がチームに潜む問題を協同で発見し、解決策を立案・実施することが肝要である。しかし、従来の人材育成プログラムは、あらかじめ設定した目標に沿って演繹的に立案されたプログラムのもと、過去の課題に対する行動変容を期待するフィード・バックであり、未来に向けた改善にはつながり難かった。 そこで上記課題を解決するため、SSMベースのアクションリサーチを援用し、帰納的かつフィード・フォワードに主眼をおいたワークショップを企画・実施した。ワークショップに参加した看護師らは、相互のコミュニケーションを通して問題発見するだけでなく、他者と自己の認知の類似点と相違点を受け入れ、相互の信頼感の強化、組織特性にあった解決策を立案するなど、チーム・プロセスの重要性に関わる「気づき」を得ていた。 SSMベースのアクションリサーチを援用した継続教育プログラムは、チーム・プロセスに焦点をあてた教育プログラムとして有用であることが示唆された。
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