本研究の目的は、地域に根差した臨床看護師の育成をめざし、モデル病院との共同で、中小規模病院における「新人看護職員臨床研修体制と連動したキャリア開発システム」を構築することにある。モデル病院は、病床数199床、7:1入院基本料、看護職員140名で、研究者1名と看護管理者9名で構成されたプロジェクトを立ち上げ、平成22年度は、システムの枠組み、ラダーレベル、評価指標の検討を行った。また、平成22年度は、新人看護職員臨床研修が努力義務として制度化されたことで、新人看護職員臨床研修にどのように取り組むかが喫緊の課題となり、A県内の医療施設の要望が高く、平成22年11月に、新人看護職員臨床研修に関するセミナーを公開講座として行った。参加施設は、県下68施設、参加人数は230名で、アンケートより、指導者育成に関するニーズの高いことが示された。その結果を受け、看護職員の臨床実践能力として、新人看護師の教育指導者、実地指導者に必要とされる能力の検討が必要となり、平成22年行う職員のニーズ調査を平成23年に行うこととし、平成22年度は、モデル病院の看護管理者を対象に「臨床で求められる能力と新人看護職員の現場教育」をテーマに、フォーカスグループインタビューを行った。グループは、主任(6名×2G)看護師長(6名×1G)の計3グループで、内容は、承諾を得て録音し、事後に、記述データとして、「新人看護職員の現場教育に関する何の要素であるか」に着眼しながら、内容分析を行った。結果、実践能力として5つの要素が抽出され、新人看護職員の現場教育の現状として、【場面に応じた指導方法の工夫】【指導上の留意すべき新人看護師の特徴】【指導者育成上の課題】【指導スキルの学習のための機会】【新人看護師の実践レベルの把握】【適切な指導者の検討】【指導者のサポート】【職場風土を変える努力】【職場風土醸成上の課題】の9カテゴリーと42のサブカテゴリーが抽出された。本結果は、キャリアパスの構成や新人看護職員研修における指導者育成の検討を進める上で、有用な資料となった。
|