1.コンピテンシーリストの作成:看護基礎教育を修了した直後の新卒看護師に求められる実践能力を、看護学生の到達すべきコンピテンシーレベルと定めた上で、患者急変時対応のコンピテンシー原案を国内外の文献等から作成した。専門家の意見を聴取した上で、新卒看護師が遭遇する可能性が高く且つ緊急対応優先度の高い臨床症状と必要な実践項目を抽出した結果、(1)心筋梗塞を疑わせる胸痛、(2)脳梗塞を疑わせる脳神経症状、(3)呼吸困難の3つの臨床症状が確認され、それぞれについて問診・観察・フィジカルアセスメント・看護診断・急変時対応から成るコンピテンシーリストを作成した。 2.質問紙調査:看護学生(臨地実習以外の臨床経験なし群)及び新卒看護師(臨床経験1年群)を対象として、3種類の急変事例を提示し、認知レベルのコンピテンシーを測定する目的で自記式質問紙調査を実施した。結果として、各事例について、問診、観察、フィジカルアセスメント、看護診断、急変時対応、急変対応の自信の程度のいずれの項目においても、両群に有意差は認められなかった。急変との遭遇は、看護学生は臨地実習中に19%が、新卒看護師は就職後の1年間に46%が経験しており、初心者レベルの看護師に対する急変対応トレーニングの必要性が改めて示唆された。 3.演習プログラムの作成:胸痛発作、脳神経症状、呼吸困難発生時の急変対応演習プログラムのシナリオと、これに付随して演習進行に必要な指導者(ファシリテータ)用ガイド及び演習参加者用ワークブックを作成した。また、シナリオ別の視聴覚教材を作成した。演習参加者は、各自のパフォーマンスを録画で振り返り、ファシリテータによるデブリーフィングセッションを受けるのに加え、視聴覚教材でモデルパフォーマンスを確認し評価用紙を活用することによって自己評価が可能となった。
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