本年度は、アロマオイルを組み合わせた足浴の内皮細胞が有する線溶促進作用について、血管内皮細胞から遊離されるプラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI-1)の血漿濃度の変動を指標として検討した。健康な女性被験者を無作為に、37℃での足浴15名(37℃足浴群)、40℃での足浴15名(40℃足浴群)、43℃での足浴14名(43℃足浴群)の3群に分け、血管に作用し、血管内皮細胞が有する線溶活性に影響する可能性のあるアロマオイルであるペパーミント、マジョラム、ライム、ラベンダー、レモン、ローズマリーの混合物を手に擦り込んだ後、足浴前、足浴10分後、足浴20分後(足浴終了後0分後)、足浴終了後10分後、足浴終了後20分後に手指から微量採血法による採血を行い、得られた血漿中のPAI-1濃度を酵素抗体法(ELISA)を用いて測定した。その結果、37℃足浴群では、足浴前に比較して、各経過時間の血漿PAI-1濃度との間に有意な差は認められなかったが、40℃足浴群において足浴前と比較して足浴10分後で、また43℃足浴群において足浴前と比較して足浴終了後20分後で血漿PAI-1濃度が有意に低下することが明らかになった。また、足浴前の血漿PAI-1濃度に対し、足浴10分後、足浴20分後、足浴終了後10分後、足浴終了後20分後の時間経過の中で最も血漿PAI-1濃度が低かった点を最低点とし、各足浴群における足浴前と最低点の血漿PAI-1濃度の比較を行った。その結果、すべての温度において、足浴前の血漿PAI-1濃度に対し、最低点の血漿PAI-1濃度が有意に低下することが明らかになった。以上の結果より、アロマオイルを用いた場合、さら湯を用いた場合でも血栓症予防効果が認められた40℃の湯温に加えて、43℃の湯温での足浴もまた血漿PAI-1濃度を低下させることによる血栓症予防効果を有する可能性が示唆された。
|