本研究は、患者を中心におく学際的医療連携チーム構築に向けて、多職種間のコミュニケーション、情報共有を含む協働などの観点からその問題を明らかにし、医療への信頼向上のために組織としてどのような基盤整備が必要かを明らかにすることを目的とする。初年度は、学際的医療チーム連携を促進する要因、阻害する要因等について、国内外の文献のレビューを行った。次に、医療制度の異なるいくつかの国(アメリカと北欧)における実態把握を行った。スウェーデン、特にストックホルム近郊の医療・福祉機関や行政、また福祉関連産業を訪問し、以下の資料ならびに知見を得た。(1)医療は県、福祉は市が責任を持つというように、行政レベルにおいて役割が明確化されている。福祉施設内の医療は、その報告先が県と市に分かれるという課題もあった。(2)病院の老年科リハビリテーション病棟やプライマリケアのクリニックの訪問が主であったためとも言えるが、医療連携に関与している医療職種が日本に比べ少ないと感じた。福祉の現場では、准看護師がヘルパーとして働いている例が多く、現場レベルでのコミュニケーションの不整合は見受けられなかった。連携のkey parsonとして、地域看護師や作業療法士の役割が重要であった。(3)退院支援においては、病院と市担当者などがウェブ上でコミュニケーションをはかれる仕組みが構築されており、退院が市側の問題で予定日を超える場合には、市が病院へ財政的負担を行わなければならないという仕組みも導入されていた。また、病院と地域クリニック間での情報共有が図れるようTake Careという地域電子カルテシステムの導入が図られていた。(4)スウェーデン国民は、一般的に行政への信頼が高く、情報保護については現在の情報技術に見合ったレベルのセキュリティのみを要求しているようであった。その他、電子カルテや外来における連携の実態など調査を継続して実施する予定である。
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