研究課題/領域番号 |
22592405
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
横手 芳恵 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (80200905)
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研究分担者 |
林 千加子 川崎医療短期大学, 看護学部, 講師 (50342291)
鈴木 千絵子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (30563796)
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キーワード | 医療事故 / 事故当事者 / 安全学習尺度 / リスク回避分析 / プログラム開発 / 看護師 |
研究概要 |
医療事故当事者のサポートに関する研究の目標(1)5段階リスク回避分析方法の確立と使用プログラム開発については、A病院倫理委員会の承認を得て、9名のエピソードインタビュー・データを解析している。当事者の回想データを体験の時系列でコード化すると、状況説明・リスク予知・行動選択・発生説明・事後対応で語られており、先行研究成果である専門家間で分析抽出した5段階の予見生成と異なるものとなった。これは事故体験を想起(リフレクション)する当事者の側からの分析であり、予見を想起することの困難さによると思われた。また、看護経験の浅い新人は意識化された体験構造が浅薄であり、ベテランの語りは、経験世界を豊かに想起し、予見の気づきが自己システムから環境システムへと構造化された。追加インタビューを分析して検証し、24年度は10名の分析結果を学会で発表(共同研究者平本)予定とした。先の5段階リスク回避分析と今回の成果を比較検討することで、予見生成をサポートするリスク回避分析方法を洗練し、使用プログラムを開発できることが示唆された。 目標(2)安全学習尺度の信頼性妥当性検証は、22年度実施した調査の有効回答2523票を分析して尺度の交叉妥当性を検証した結果、開発時同様の6因子構造が確認され、データ適合度もCFI0.886,GFI0.878,AGF0.886,RMSEA0.079と許容水準を満たす結果が得られ、第6回医療の質・安全学会学術集会で発表した。看護師の医療事故の特性とサポートによる事故から学ぶ関係を分析して一部結果をまとめ投稿中で、データ解析をさらに深め、理論検証に発展させる予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A病院倫理委員会の審査結果が大幅に遅れたが、現在9名のインタビュー結果を解析できた段階にある。質的データの分析が先行研究結果に統制を受けないように、関連学会に参加し、事故体験のバリエーションを比較するなど慎重な分析を進めている。 安全学習尺度の交叉妥当性の検証や理論検証に必要な統計解析の技術を研修するなどして、解析を深化させている。
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今後の研究の推進方策 |
研究目標(1)は、当事者の視点で予見生成できる構造化を進めており、比較分析による妥当性(真実性)を高めるため対象を異なる施設に広げ、予見生成のカテゴリーを洗練させて、リスク回避分析方法として確立し、この方法を用いることでリスク感性を高めリスク回避能力が身につくサポートの可能な使用プログラムを検討する。 研究目標(2)は、安全学習尺度を基盤にしてデータ解析を進め、医療事故体験者がサポートとの関係で当該事故から学習する理論仮説を検証するなど、全国調査で得られた結果を多面的に解析し、成果を逐次発表予定。
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