研究課題
リスク感性自己診断表作成のため、平成22年度は新人看護師を対象にインシデント・アクシデント体験に関するインタビュー調査を実施し、新人看護師のリスク感性の傾向と場面の分析を行った。その結果、新人看護師が語ったインシデント・アクシデントのうち6場面を財団法人日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業を元に分析したところ、『治療・処置』『ドレーン・チューブ』『薬剤』『療養上の世話』『その他』に分類された。そして、新人看護師のリスク感性の傾向としては、忘れそうな時間毎処置は目立つように強調し何度も確認したり、また似ている患者や薬剤への注意意識といったリスクの知覚はしているが、実施場面では欠落していた。また、チューブ類や機械等の体験の少なさから、チューブ閉塞や機械の不具合が起こるかもしれないというリスクの予測ができていなかった。そのため、少しの異変を感じても回避することができず実施してしまい、エラーに至ってしまう傾向が明らかになった。その背景には、慣れない勤務による緊張や、時間内に終わらせなければならない焦り、次の業務への気持ちの先走りが、いつもの確認行動の省略や判断を誤らせてしまうことにつながっていた。さらに、学生時に経験していない多重課題への対応も背景にあった。以上のことから、リスク感性自己診断表の作成にあたっては、新人看護師のリスク感性の傾向とその背景をふまえた臨床看護場面を映像化し、診断指標を作成することが重要であることが明らかになった。臨床看護場面を2場面作成し映像化を行ったため、今後はそれらをもとに診断指標作成のための研究を継続していく。