災害時の通信を検討するため、本年度は本格的な実験に向けて(1)無線通信機器および(2)無線通信インターネット中継用ソフトウエアの作成及び予備実験を進めてきた。(1)無線通信機についてはデジタル簡易無線と特定小電力無線を用いて実験を行った。デジタル簡易無線については法的側面、経済的側面、技術的側面より検討を行い、またシミュレーターと実地試験による通信可能範囲を調査した。その結果、総合的に災害時の通信手段としての有用性が示された。次に特定小電力無線については、特定小電力無線レピーターを2系統作成した。一つは遠隔より周波数変更の操作ができ且つ、太陽電池による自立した固定用中継システムと、災害被災地で緊急に設置できる移動用中継器の2つを完成させた。これを用いた無線中継実験を実施するとともに、2011年2月に実施された湘南国際マラソン大会の救護活動、3月の東北関東大震災時の初動及び被災地での救護活動において実際に利用、実務での有用性を実証した。(2)無線電話のインターネットの中継に関する研究では、中継用VoIPソフトのプロトタイプを完成させたが、実用的な段階には至っていない。次年度にかけてさらにその完成度を高めていく予定である。その間、無線愛好家が作成しフリーのVoIPソフト(eQSO Gateway-PMR Radio)を利用して、無線電話をインターネットで中継する実験を行ってきた。マラソン大会の救護活動では前記の無線中継器と組み合わせて利用し、ほぼ実用的であることが確認された。
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