16時間夜勤に従事する看護師を対象に、夜勤前・中・後の心拍変動、夜勤前・後の疲労テストを実施し、夜勤で起こる中枢性疲労を生理学的に評価しようと試みてきた。今年度はこれまでに収集したデータをもとに論文を作成し、時間生物学の学術雑誌に投稿した。論文の概要は以下の通りである。 ほぼ同質な16時間夜勤に従事する看護師の中に、夜勤前の交感-迷走神経バランスが異なる者が混在していた。それを2群に分けて、勤務時の活動および仮眠中の自律神経バランス、勤務前と後の疲労テストを比較した。その結果、サーカディアンリズムに逆らって働く夜勤による一過性疲労を検出する者と、もとより蓄積疲労を持つ者の差違が検出され、蓄積性疲労を持つ者のスクリーニングの可能性が示唆された。 これらのことは、評価が難しいとされている慢性疲労症候群(CFS)の生理学的な評価の一助となり、交代制勤務に従事する看護師の中に潜むCFS予備軍を検出し、労働衛生管理サポートの指針に繋がる。今後は、夜勤中の仮眠と夜勤後の自宅での仮眠や夜間睡眠に焦点をあて、看護師の蓄積疲労検出の試みを続けていく。 また、本年度は末梢性疲労の評価として収集してきた、健康な20代前半の女性を対象とした血流阻害時の脊髄反射(H-reflex)に関するデータをまとめ、学会で発表した。本研究は、加圧による阻血-開放による一過性の血流障害を擬似的な夜勤後の下肢浮腫とみなした実験であり、夜勤後の末梢性疲労の評価の一環として実施された。さらに、二交代制勤務に従事している20-30代の女性看護師を対象に、平日と夜勤後の座位・臥位・立位の3姿勢におけるH-reflex測定を実施した。本結果は被験者数が少なく、本年度中の学会発表はかなわなかったが、今後データ収集を重ね発表していく。
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