本研究の主要な目的は、ヒューマン・ケアリングを基軸とした看護学士課程のカリキュラムの中でトランスパーソナルな視座にたつケアリング・リタラシー(Watson、2009)を育む精神看護学教育の開発を目指すものである。主たる本年度の研究成果は、教育方法のための文献検討、および米国でのケアリング教育・研究者を対象にトランスパーソナル教育、ケアリング・リタラシー(能力)についての意見聴取を行った。 トランスパーソナルな看護教育は、人間を身体、知性、感情、意思、そして何よりスピリチュアリティを持って常に変容していくものとして捉え、「個」を超えて、私たちが宇宙や自然ともつながり、他者とともに支え活かされていることを認識することと捉える。そして、トランスパーソナルな看護教育に裏打ちされる精神性について、その目標を外部知覚の眼、理知の眼、そして、真理発見の眼である黙想の眼(伊藤、2002)の3つの眼を涵養することとした。 さらに精神看護学教育で、特に実習における教員と学生のトランスパーソナルな関係、ケアリングの意味と価値を深めていくための教育方法のモデルを明確にした。Schein(1999)の提唱する内面のプロセスモデルを活用し、学生が看護援助のために行動として表すまでのプロセスを、観察、情緒的反応、ケアリング倫理と哲学を基盤にした判断、そして実践とするプロセスで示し、学生と教員のケアリング教育に応用することとした。 ケアリング・リタラシーについては、文献より抽象的なカリタス10因子を実践する臨床場面での、具体的な行動レベルとして確認を行った。
|