研究課題/領域番号 |
22592429
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研究機関 | 日本赤十字広島看護大学 |
研究代表者 |
戸村 道子 日本赤十字広島看護大学, 看護学部, 教授 (00343682)
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研究分担者 |
稲岡 文昭 日本赤十字広島看護大学, 看護学部, 教授 (40151568)
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キーワード | トランスパーソナル / ケアリング / 精神看護学教育 |
研究概要 |
本研究の主要な目的は、ヒューマン・ケアリングを基軸とした看護学士課程のカリキュラムの中で、トランスパーソナルな視座にたつケアリング・リタラシー(Watson,2009)を育む精神看護学教育の開発を目指すものである。研究1年目のH22年度は、トランスパーソナルな精神看護学教育の精神性について、「個」を超えてより高次の次元での意識を持つように成長すること、支えあい生かされていることを認識するものと捉えた。そして、ケアリングリタラシーを育むため、看護学生の精神看護学での知を臨床実践の学習体験と統合し、「外部知覚の眼」「理知の眼」「真理発見の眼である黙想の眼」の3つの『眼』を涵養することを目標として掲げた。さらにSchein(1999)の示した内面のプロセスを看護に応用し、教育方法のモデルを明確にした。 そこで研究2年目のH23年度は、看護教員に同意を得て可能な限り教育モデルを活用し具体化を図れるよう、主に精神看護学実習において看護学生と患者、看護教員の関係性について、ケアリングの意味と価値を深めていくための実践の現状と見直しを行った。また研究主担当者が看護教員と学生のカンファレンスに参加し、ケアリングリタラシーを深め、上記認識の3つの眼の視点について観察し、これらを共同研究者3名で考察と分析、意味づけを行った。 教育モデル活用の具体的な実践例については、精神看護学実習目標とそれに沿った学生個人レベルでの目標について、実習前・実習中、実習後に個別に、教員と学生とが達成状況の確認を行った。そして学生と患者との関わりの場面、プロセスレコード、ポートフォリオを通して、学生の看護現象の気付きの「眼」、情緒的反応、ケアリングに基づく状況判断、その実践の意味を学生と一緒に分析をおこなった。そこで1.精神看護学実習で、学生の個別の実践能力と課題に応じた学習への意識と動機付けの促進について、「理知の眼」を広げ、教員のフィードバックと保証によりケアリングの意味と価値の深化に学生が気付き、言語化できる一連のプロセスとして確認された。また2.看護教員と学生との関係の中で、学生個々の個性を生かしたケアリングの実践体験と意味を考察していくプロセスと体験により、学生は同様に患者の個性を生かしその人らしさを慮る実践へと転化していた。そして、3.自身の患者との関係の中から、自己の体験に価値を見出すことで、自信と希望、そして勇気が新たな学生の学習へのチャレンジとしての原動力となっていることが示されていた。 研究の最終年度である本年度は、学生と患者との関係にさらに焦点を当てて、トランスパーソナルな体験の現象を明確にし、教育方法の洗練と評価を行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トランスパーソナルな視座に基づく教育方法の開発とその実践、および評価を行うにあたり、本年度は実践に重点を当てているため。最終年度である本年度は評価と洗練を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
精神看護学の講義、演習、実習の一連の教育方法を見直し、平成24年度に評価を行う。
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