本調査の目的は「乳がん体験者の術後上肢機能障害予防改善に向けた介入プログラム」の長期効果を上肢機能と生活機能(上肢障害評価表)、QOL、リンパ浮腫・運動障害等を予防するためのセルフケア達成度によって明らかにすることである。 介入群にはUCSFモデル(1994)を枠組みに作成したプログラムに基づいて術前、術後1週、1か月、3か月、6か月以降6か月毎の3年まで原則10回介入した。非介入群は医療者が通常行っているケアを受けた。分析対象者は初発乳がんで腋窩リンパ節郭清術を受けた65名(介入群37名、非介入群28名)のうち、2014年3月17日までに術後3年までの調査を終了した介入群26名、非介入群13名である。 対象者39名の術後3年の腕症状は知覚鈍麻が23.5%~35.3%、筋力低下が23.5%~29.4%、腫脹・痛み・肩関節可動域制限が各5.9%~11.8%だった。術後3年までの介入群と非介入群の上肢機能、セルフケア達成度、QOLを比較した結果、乳がん体験者の上肢機能障害に対する主観的認知尺度合計得点(0~15)中央値は介入群0.0(SD=2.5)、非介入群3.1(SD=3.1;範囲1~10)で、介入群が有意に少なかった(p=.02)。DASH(0~100)中央値は介入群7.9(SD=7.6)、非介入群10.8(SD=14.7)で、2群間に有意差はなかった。周径患側健側差2cm以上の対象が上腕11.8%、前腕5.9%、肩関節可動域健側患側差10度以上は屈曲・外転・水平伸展が各11.8%、握力健側患側差4kg以上は5.9%で、2群間に有意差はなかった。セルフケア達成度(0~100)は介入群が88.5(SD=8.7)、非介入群が64.0(SD=20.3)で、介入群が有意に高かった(p=.00)。また、介入群のQOLが高かった。乳がん術後上肢機能障害の予防改善を目的とした術後3年までの教育的介入は、乳がん体験者の上肢機能および生活機能による症状マネジメント効果が示唆された。
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