研究概要 |
在宅で療養している遷延性意識障患者に関する調査では,介護者(家族)は「もう一度声が聴きたい」「好きなものを食べさせてあげたい」という要望が最も強かった.意思の疎通が困難であり,ADL全般に介助を要し,展望のない中での長期に及ぶ意識障害患者の介護は,家族の身体・精神的な負担が多大である.したがって,食べる機能の回復は意識障害患者および介護者のQOLの向上を図るためにも重要な意味を成している.近年では摂食・嚥下訓練は言語聴覚士の役割と認識されているが,急性期や意識障害などの重度障害者の経口摂取では呼吸・循環等の全身状態の評価や吸引が必要であることからも看護師の重要な役割である.そこで,本研究では栄養を基盤にした食べる機能の回復に向けた,意識障害患者の看護介入モデルを開発することを目的としている. 平成23年度は,家族のケアにより経口摂取が可能になった事例の集積を目的に調査を実施した.意識障害があると,医療者側は経口摂取の訓練を実施しないことも多く,退院し在宅療養を始めてから家族が経口摂取の訓練を行い経口摂取を確立した例もある.今年度の調査では,自宅退院後7年かけて経口摂取ができるようになった事例から,経口摂取が可能になるまでの摂食嚥下訓練の経過についての調査を実施した.しかし,対象が目標数に至らなかったため,平成24年も継続して調査を実施する予定である.
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