精神科救急・急性期治療の場ではどのような臨床判断が必要かについて、調査結果をもとに作成した看護ケアガイドラインと照合しながらエキスパート・レビューを行い、激しい精神症状での入院患者が主であるため、初期での状態把握と危険性を査定する能力、地域生活で抱えていた課題と生活スキルを把握し、地域での支援者に情報提供すること、服薬継続に向けた援助を実践する能力が求められることが確認された。 後半ではガイドライン使用の手引き作成後、精神科救急・急性期治療を行う病棟4ヶ所にガイドラインを紹介し、それぞれ約3ヵ月間の試用を行った。試用期間後、自記式質問紙を配布し、ガイドラインに掲載されている「ケアの内容」「行う理由」「重要度と実施時期」の理解が可能か、有用かを問う評価調査と新人看護師に対して看護実践上の困難と教育的ニーズを問うインタビュー(計12名)を実施した。 その結果、手技的看護行為は半年程度で遂行可能となるが、観察・聴取した情報から精神状態を査定することや精神状態に影響する人的・物理的刺激を調整し「活動と休息のバランス」を保つケアを実施する際に難しさを感じていること、教科書や文献で得た知識があっても、具体的な現象(患者の状態)と照合して解釈していくことが難しく、経験豊かな先輩看護師からの助言や事例検討での学びの機会を求めていることが明らかとなった。 一方、救急救命ユニットの看護師は、自殺未遂のケースや自傷行為を繰り返し受診してくるケース、動揺し不安状態にある家族に関して精神的問題があると感じているが、1~3日程度で精神病院や精神科病棟への転科する状況下では、病院内でリエゾン精神科医やリエゾン精神看護師を利用できる場合には、相談機能を活用し対応していることが確認された。調査結果からは、必要な処置・検査・身体ケアが容易に遂行できれば、患者への対応で困難さを感じない傾向が認められた。
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