研究概要 |
がん化学療法の発達に伴い、さまざまな有害事象への対応が重要となっている。皮膚の有害事象については生命予後に直接関係しないことからあまり注目されてこなかった。近年分子標的薬による特徴的な皮膚症状が高頻度に出現することから盛んに取り上げられているが症例報告が多く、細胞障害型抗がん剤による皮膚の変化や治療時のケアの根拠については、あまり明らかになっていない。今回婦人科がんで化学療法の皮膚のバリア機能への影響とそれによるQOLへの影響を検討する事を目的として、婦人科がんで化学療法を受けた人と健常者の皮膚の生理学的データを測定して比較した。今回は特に婦人科がんで治療中の対象者は手術やその後の追加治療で殆どが閉経状態であったため、化学療法群と健常者の閉経群を比較検討した。 検討の結果、化学療法群と閉経群は角層水分量などに似た傾向が見られた。閉経していない健常者とは明らかに角層水分量に差が見られ統計的有意差があった。その他様々な生理学的な指標での差が見られ,以下のようなことが分かった。 ① 化学療法群は角層水分量が低く、乾燥しがちであることがわかった。これは基底細胞の障害により角層形成が影響を受け、NMFや細胞間脂質のセラミドなどが減少することによると考えられた。 ② 卵巣癌では手術や抗がん剤治療により完全に閉経した状態であり皮脂の分泌も低下している。その為保湿だけでなくエモリエント効果を考えたスキンケアが必要である。 ③化学療法を受けた対象者のスキンケアは保清、保湿、保護の3原則に実施する必要がある。スキンケアは基本的に難易度の低いセルフケアであるため、対象者自身がきちんと実施できる様に十分なオリエンテーションを行い支援することが必要である。 現在、成果をまとめ投稿論文の執筆中である
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