本年度は、虚血性心疾患患者のリスク認識が患者のセルフマネジメント行動の予測因子となりうるのか検討することを目的に、横断的記述研究デザインによる質問紙調査を実施した。経皮的冠動脈インターベンション療法後1年以内の虚血性心疾患患者62名に質問紙を配布したところ、55名の対象者から質問紙が回収された(回収率88.7%)。分析は、統計パッケージSPSS Ver19 を用いて行った。 分析の結果、食事のセルフマネジメントと病気を前向きにとらえる「リスクのポジティブ転換」との間にr=0.48の正の相関が、「症状の自覚」との間にr=-0.30の負の相関がみられた。また、食事以外のセルフマネジメント行動と「病気の重大性」の認識にはr=0.30、「リスクのポジティブ転換」との間にはr=0.50の正の相関がみられた。更に、t検定の結果、病気の原因が自分の生活習慣にあると考えている患者の方が有意に運動を実施しており、自己効力感が高く、うつ傾向が少ないことも示された。次に、食事のセルフマネジメント、運動習慣、食事以外のセルフマネジメント行動を従属変数、病気に関するリスク認識を独立変数として強制投入法による重回帰分析を実施した。その結果、食事のセルフマネジメントについては「症状の自覚」、運動については「病気の原因」「リスクモニタリング」、食事以外のセルフマネジメント行動については「リスクのポジティブ転換」が主な独立変数として採択され、それぞれの説明率は36%、32%、30%であった。サンプル数が少ないため限界はあるものの、これらの結果より、病気のリスク認識が虚血性心疾患患者のセルフマネジメント行動に影響を及ぼしていることが示唆された。今後は更に分析を進めていき、最終報告までにリスク認識モデルの検討につなげていく予定である。
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