2009~2011年にかけて本邦で相次いで認可されたGLP-1受容体作動薬は、低血糖を起こしにくいという特徴と、内服および3日に1回程度の注射投与が可能など使用方法が発展段階にある。特に高齢者では内服治療とインスリン治療を結ぶ役割を担うことが期待され、新規インスリン導入における医学的評価がなざれているところである。このため、増大する高齢糖尿病患者においても、インスリン導入の際の新規患者指標には慎重な対応が必要な状況となった。よって、本研究の平成23年度における目的は、前年度のインタビュー調査から得られた、現在インスリン療法を行っている高齢糖尿病患者の困難と問題点について信頼性を検討し、家族や介護者にも使用できる医療機関来院時の指導媒体を作成する事とした。 方法は、高齢糖尿病患者のインスリン治療、および困難に関する国内外の医療文献から抽出した22編から、量的評価研究を絞り入手できた8編についてレビューし検討した。また、米国で使用されるインスリン治療患者に向けた指導用冊子から、高齢者への情報提供の項目と表現を収集し、日本で適用できる内容を医師、看護師、栄養士など多職種で検討した。 結果は、高齢者の糖尿病への指導媒体に含まれる内容として、1)病態説明・現在の状態を繰り返し確認しあう等、2)食事療法ではお茶の時間の内容や嗜好の偏りへの配慮等、3)運動療法では外出習慣と室内でも身体を動かす習慣付け等、4)注射機器の扱いではルーペの常備や不具合時の相談先の明示等、5)低血糖症状時の飲食物を具体的に示すこと等、5)フットケアで足浴や爪切りの手順の説明等、より生活に沿った具体的な指導が求められ、協力医療機関の医師・栄養士・薬剤師とともに「60歳からの糖尿病-より上手くつきあうために-」カラー全12pの小冊子を作製した。今後も、増え続けるインスリン治療が必要な2型高齢糖尿病患者の支援への一助となる研究につなげて行きたい。
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