本研究は、使用が簡便な肺がん患者用生活調整尺度(短縮版)の開発を目的で行ったものである。堀井ら(2010)による肺がん患者用生活調整尺度(5因子、22項目版)の探索的因子分析の因子負荷量を基準に、短縮版に用いる項目の選択を行った。項目の選択にあたっては、(1)負担が少なく現場で利用しやすい尺度としての短縮版作成を目指していること、(2)22項目版において、ひとつの下位尺度を構成する最小の項目数が2項目であることから、短縮版では下位尺度項目数を2項目に統一した。3項目以上からなる下位尺度については、因子負荷量が高い2項目を短縮版の項目として選択し、10項目(2項目×5因子)を短縮版の質問項目とした。短縮版の冗長性を確認するために、各下位尺度内の2項目間の相関係数を算出した。項目数を減らした因子に関しては、r=.39が最大であり、強い相関は認められないことから質問項目の冗長性は問題ないと考えられた。短縮版10項目について、因子数を5に固定して因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行ったところ、すべての項目が想定通りの因子を構成した。複数の因子に0.30以上の負荷量を示した項目はなく単純構造であると考えられた。短縮版および22項目版の各下位尺度について、クロンバックのα係数を算出した。短縮版についてはα=0.657~0.805が示され、内的一貫性が示唆された。短縮版の基準関連妥当性を検証するために、22項目版と短縮版の各下位尺度得点間の相関係数を算出した。項目数を削除した下位尺度については、r=0.858~0.922といずれも高く、22項目版で測定しようとしている構成概念を短縮版でも十分に反映されていることが示唆された。 以上より、短縮版(10項目)には使用上の問題はないと考えられるが、今後も実証検証を進め、本尺度の信頼性、妥当性、実用性を立証していく必要がある。
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