研究概要 |
研究1: 【目的】心臓外科手術後患者の退院時身体活動量特性を把握し、入院中のリハビリプログラムを再考すること。【対象と方法】待機的心臓外科手術後患者74例(平均年齢67.3[38-85]歳)を対象に、3軸加速度計にて手術前日および手術後から退院までの終日の身体活動量を連日測定した。併せて退院時に6分間歩行距離(6MD)や自己効力感(SEPA)、HADSなどを評価した。【結果】退院時の身体活動量が少ない症例ほど、退院時の6MDが短く、SEPAスコアが低く、抑うつ・不安スコアが高かった。HADSで抑うつが疑診と判定された症例(n=14)の退院時の平均歩数は1833歩で抑うつなしの症例(n=60,2629歩)より有意に低値を示した。【意義・重要性】心臓外科手術後のリハビリプログラムは運動強度を増加させるプログラムに加えて、年齢や心情を加味した身体活動量にも配慮したプログラムが必要と考えられた。 研究2: 【目的】心臓外科手術後患者の退院時身体活動量が退院後の主要血管心イベント(Major Adverse Cardiovascular Events;MACE)の発生や健康関連QOLなどに与える影響について検討すること。【対象と方法】待機的に心臓外科手術を受けて6ヵ月以上経過した患者102例(平均年齢68.4[38-85]歳)。退院時の身体活動量と、退院後のMACEによる入院歴、抑うつ・不安(HADS)、健康関連QOL(SF-36)などの関連について調査した。【結果】観察期間中にMACE発生により入院した症例は102例中16例。退院時の歩行歩数が平均値以上のA群(51例)と平均値未満のB群(51例)に分けて、MACE発生による入院をエンドポイントにKaplan-Meier生存分析にて累積MACE発生率を算出すると、A群7.8%、B群23.5%で、B群において有意にMACE発生による再入院率が高かった(p=0.030,Log Rank test)。さらに、B群において調査時点における抑うつ・不安スコアが高く(p<0.05)、SF-36スコアが低かった(p<0.05)。【意義・重要性】退院時の身体活動量は、退院後のMACE発生率や健康関連QOLにも影響しており、心臓外科手術後のリハビリテーションには早期離床に加えて身体活動量にも配慮する必要があると考えられた。
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