研究概要 |
【目的】心臓外科手術後の退院前の身体活動量と手術後1年間の主要心血管イベント(MACE)との関連について検討すること。 【方法】対象は心臓外科手術後患者133例。平均年齢は66.4(38-84)歳。心臓外科手術後のリハビリは日本循環器学会のガイドラインに従って進めた。身体活動量は退院前3日間の平均歩行歩数を採用した。手術後1年の時点での健康状態、MACE発生の有無、健康関連QOL、抑うつならびに不安に関する心理状態をアンケート郵送法で調査した。 【結果】心臓外科手術後の退院前の平均歩行歩数は2,460±1,549歩であった。手術後1年間の観察期間中にMACE発生により入院した症例は、133例中16例(12.0%)であった。退院前の平均歩行歩数は、MACE(+)群で1297.1±1231.8歩、MACE(-)群で2620.1±1523.7歩であり、MACE(+)群において有意に低値を示した(p<0.01)。また、MACE(+)群で有意に年齢が高く、eGFRが有意に低値で、入院期間が有意に長かった。MACE発生を予測する退院前の平均歩行歩数のカットオフ値は1308歩であった(ROC曲線のAUC 0.7836、p<0.001、感度0.814、特異度0.733)。さらにMACE発生の臨床的危険因子である年齢、推定糸球体ろ過量(eGFR)、入院期間を共変量として、Cox比例ハザード解析を行ったところ、退院前までに1308歩以上歩けないことが最も強いMACE発生予測因子として抽出された(ハザード比 7.58; 95% CI: 2.04-28.22)。最後に、Kaplan-Meier生存分析を行ったところ、退院前に1308歩歩けない群で有意にMACE発生が多かった(χ2=23.1, p<0.0001)。 【結論】心臓外科手術後の退院前の身体活動量はMACE発生と関連する。
|