肝がん患者の看護に関する現行看護学教育の教材等、および肝がんで手術を受ける患者の看護研究の現状を明らかにするために、文献調査を実施した。2005~2010年に発行された看護学の教科書・参考書、看護系雑誌等から、肝がんで手術を受ける患者の看護について記述された文献、ならびに2001~2010年に発行された肝がんで手術を受ける患者の看護について記述された看護研究の原著論文を収集し、データベース化した。 看護学の教科書・参考書からの該当文献は29件、看護系雑誌の文献は41件、看護研究の原著論文は19件が収集された。各文献の対象読者、筆者の属性、看護実践の記述内容などを分類してデータベース化した結果、教科書・参考書は看護学生対象が多く、看護系雑誌文献は、雑誌本体が看護実践者対象の刊行物が多いため、実践者を対象として書かれていた。筆者は、教科書・参考書は教育・研究者、雑誌文献は看護実践者と医師が多かった。看護に関する記述内容は、肝がん術後の出血、肝不全(肝機能障害)について記載されたものが多く、他に創痛、血糖コントロール、胆汁漏、呼吸器合併症、不安に対する心理的援助などについて記載されていた。看護研究のテーマは多岐にわたり、周手術期の回復に着目するもの、肝炎・肝硬変から肝細胞がんへの移行、転移・再発等長期のプロセスを記述するものなどがあった。転移性肝がんで手術を受ける患者の看護に焦点を当てた文献は少なく、特にその特徴や原発がん手術との相違に言及した文献はほとんど見られず、特徴の明確化や看護援助方法の考案の必要性が示唆された。
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