本研究は、育児中の母親を支援するためのプログラムとして、乳児の泣きへの見極めを促すガイドラインの開発を目的とした研究である。泣きの見極めの過程を提示したガイドラインを作成するにあたり、これまでに母親がいつ頃、どのように乳児の泣きの見極めができていくのか、文献およびこれまでの調査データの分析結果より明らかにした。母親による児の泣きの見極め過程は、初産婦と経産婦で異なり、泣きの意味が分かるようになる時期は初経産の場合は、経産婦より遅れ、個人差はあるものの、半年から7~8か月、1年を要することもあった。乳児の泣きで最も困難を感じた時期は、初産婦、経産婦ともに出生後から2~3か月頃までが多く、1年時においても2割程度の母親が泣きに戸惑いを感じる経験をしていた。このことは、生後1年頃でもすべての泣きに対し、見極められるということではなく、時には泣きの意味が分からないこともあるということを示すものである。したがって、これらの結果を、時期別にわかりやすくモデル化するための作業を行った。母親が見てわかりやすいものとなるよう、試行を続けている。このモデル化により、母親がいつの時期は、泣きの意味が分からなくても自分だけがわからないのではなく、多くの母親達も同じように経験しているということがわかると安心につながり、また、いつ頃になると、泣きの意味が分かるようになるという見通しがたてやすくなり、泣きに対しての戸惑いや困難さから引き起こされる育児不安の解消、予防に貢献できるものと考える。
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