研究概要 |
最近,成人病胎児期起源説が世代を超える可能性があることが報告されるようになってきた.今回,胎内環境やその後の生活環境が,次世代の発育や発達にどのように影響しているのか,次のような研究目的を設定し,IUGR児の追跡調査を行なった.目的1.IUGR児の身体発育特性に関する調査,2.IUGRの視床下部下垂体副腎系への影響を介したストレスへの精神・身体反応への影響に関する調査,3.IUGRの脳への影響を介した認知機能・学習機能,衝動性・多動への影響に関する調査.1994年1月から2000年12月までにA病院にて出生したIUGR児(標準値より10パーセンタイル未満)70名,1500g未満のAFD児(周数相当体重児)57名,正期産児(在胎週数37週以上,出生体重2500g以上)49名の子ども達とその母親を対象としアンケート調査を行った.属性や発育を記載する質問紙とCDI日本版(うつ得点)やPRS(LDスクリーニング)を配布した.回答は,IUGR児38名,AFD児35名,正期産児30名の計103名であった(回収率:58.5%).面接の同意が得られた38名(IUGR児14名、AFD16名、正期産8名)を対象とし,心理社会的負荷テスト前後における血圧測定、唾液採取および発達検査を行った.身体計測の評価としてcatch up率とZスコア,IUGR(胎内発育)の脳への影響の評価としてPRSとCDIの得点を,3群で比較した.その結果,学童期の発育はZスコアはControlには及ばないものの標準以内で,catch up率は身長で約半数が体重は7割以上を示した.PRSにおいて,Controlの比較では,全項目得点,LDサスペクトrate,言語性領域得点および非言語性領域得点で有意に低かった.CDIは得点が1.7点高いものの有意差は認めなかった.面接調査では,IQは有意に低かった.また,負荷後の血圧が高い傾向を示した.今後,両親の学歴や年収などとの関連を含め,胎内環境の影響を詳細な分析を進める予定である.
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