本研究は、3ヵ年間で産褥期における骨盤底筋力の変化と尿失禁との関係性を明らかにするものである。産褥期の尿失禁は、妊娠期に尿失禁を経験しても、分娩を経ると大幅に改善される。妊娠期に尿失禁を経験しても多くは、年齢的にも妊娠している者はその人の人生で若く健康な時期であり、自然治癒することが考えられる。しかし、産褥3ヵ月時に尿失禁の経験しているものは、永続的に尿失禁を経験すると考えられている。このため、育児に追われ自分自身の身体について振り返る余裕がない産褥1年次までの時期に、いつ・どの程度の尿失禁を経験しているかを明らかにする必要がある。 そのために、骨盤底筋力が非妊娠時と同様であると予測される妊娠初期(妊娠12週未満)から妊娠後期(分娩前まで)の妊婦に妊娠期の尿失禁状況を妊娠36週以降に質問紙調査票にて調査する。 対象者の尿失禁状況を横断的に調査するために、産褥1ヵ月、産褥3ヵ月、産褥6ヵ月、産褥8ヵ月、産褥12ヵ月の計5回実施した。その対象者の中から、5名の褥婦に骨盤位置確認(立位・仰臥位にて測定)・尿失禁の確認を実施した。コントロール群として非妊娠時期の独身女性(妊娠・出産経験の無い者22~35歳)に骨盤位置確認・尿失禁の確認および60分パットテストを実施した。 結果として、尿失禁は分娩を経ると自覚症状は激減する。産褥3ヵ月後に尿失禁を自覚したものは、程度が重度である。また、痔核、便秘等の他の症状の訴えが増加することが示唆された。 これらの調査から得られたデータをもとに、骨盤底筋力の変化と尿失禁状況との関連を分析し、産褥期の尿失禁予防・改善に向けた基礎的資料とする。
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