本研究では、婦人科疾患の治療を受ける患者の性機能、排尿機能およびQOL評価の経時的変化、およびこれら相互の関連を明らかにすることを目的とし、調査研究を行っている。 年間60~70例を目標にして調査を進めてきたが、年度末の東日本大震災の影響もあり平成22年度は49例にとどまった。すでに調査を開始していたデータと合わせて分析したところ、治療後の早期においては治療前に比べて治療後のQOL評価が低いことが予想される結果であった。年齢により違いがあることはわかったが、疾患や術式による違いについてはっきりした結果は得られなかった。なかでも性機能については、術前から術後にかけて性交がないと答える患者がほとんどで、性機能と他の要因との関連を明らかにするには相当数のデータ集積が必要だと考えている。我が国において女性の性機能評価についての研究は、倫理的な問題から今後も発展しにくい分野である。先行研究が少ないことから、性機能を含めた生活の質の現状を調査することは、実態把握そのものに大きな意義があると考えている。 3年間の追跡調査であるが、いまのところ2年後以降のデータが少なく、比較検討ができていない。また、広汎子宮全摘術における神経温存の有無による影響については、さらに症例数が限られるため比較するに至らない状況である。まずは疾患を特定せず、あらゆる婦人科疾患で治療を行なった患者を対象とし、データの集積を重ねることが先決だと考えている。
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