研究課題/領域番号 |
22592515
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石田 志子 東北大学, 大学病院, その他 (20269377)
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研究分担者 |
新倉 仁 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80261634)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 婦人科疾患患者 / QOL / FSFI / 排尿機能スコア / 自律神経温存広汎子宮全摘術 / 術中神経刺激 |
研究概要 |
今年度2月末までの回収率は1ヶ月 42.0%、3ヶ月 46.8%、6ヶ月 45.6%、12ヶ月 49.2%、24ヶ月 58.8%、36ヶ月 41.8%であった。 新規の患者を含めた患者319名で解析した結果、婦人科疾患患者の外科的治療後は、SF-36の精神的側面、排尿QOLスコア以外のすべてのスコアは、治療前に比べて悪化した。SF-36は治療後12ヶ月で治療前値まで改善したが、FSFIおよび排尿機能スコアは治療前より劣ったままだった。 子宮の悪性腫瘍で開腹子宮全摘術を受けた98名については、広汎子宮全摘術の術中神経刺激で神経温存状態が確認できた温存群、確認できなかった非温存群、単純あるいは拡大子宮全摘術+骨盤リンパ節郭清群(PLA群)、骨盤および傍大動脈リンパ節郭清群(PALA群)に分類し、術後12ヶ月までの性機能、排尿機能、QOLスコアを比較した。1ヶ月と3-6ヶ月の排尿機能スコアおよびSF-36は、非温存群より温存群で良好だった。温存群とPLA群の比較では、3-6ヶ月のICIQ-SFはPLA群より温存群で低く、SF-36の身体機能、全体的健康感、活力はPLA群より温存群で高かった。温存群とPALA群との比較では、治療前、3-6ヶ月、12ヶ月の性機能スコアがPALA群より温存群で高かった。また、1ヶ月の排尿QOLスコアおよび12ヶ月のICIQ-SFはPALA群より温存群で劣っていたが、SF-36は治療後どの時期においてもPALA群より温存群で良好だった。以上より、骨盤リンパ節郭清を伴う広汎子宮全摘術で神経温存されたものは、神経に対する操作の加わらない術式と比較しても、性機能スコア、排尿機能スコア、QOLが同等以上の可能性があること、傍大動脈リンパ節郭清を伴う術式は、広汎子宮全摘術で神経温存されたものよりQOLが劣る可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査実施者の本研究に対するエフォートが増えたこともあり、年間60~70例を目標としていた新規協力者は81例と順調にデータ集積ができている。しかし、24ヶ月以外の時期の回収率が50%に満たないため、調査依頼時に郵送調査にも享禄していただけるよう、調査の目的を十分に説明していく予定である。 12ヶ月までのデータから新たな知見も得られ、平成25年5月に開催される日本産科婦人科学会で成果報告を行う予定である。しかし、データの信頼性の観点から24ヶ月以降の対象者数は不足しているといわざるをえない状況であるため、引き続きデータ集積に努める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
当院では自律神経温存の客観的評価として術中神経刺激を行っているが、現在はほぼ全例が術中神経刺激実施の対象となっているため、今後の広汎子宮全摘術解析対象者は解析に含めることができるものと見込んでいる。客観的に自律神経温存が確認できた対象を増やし、今後は性機能、排尿機能、QOLの客観的スコアとの整合性についても検討していきたいと考えている。広汎子宮全摘術に限らず引き続き新規協力者を増やすと同時に、郵送調査への協力要請を行っていく予定である。 途中経過ではあるが、来年度中には論文にまとめて投稿したいと考えている。
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