目的 日本人の産後の女性を対象に、妊婦時の冷え症が分娩時に与える影響を分析し、冷え症と、早産、前期破水、微弱陣痛、遷延分娩、弛緩出血との因果効果の推定を行うことである。 方法 研究デザインは後向きコホート研究である。調査期間は、2009年10月19日から2010年10月8日までの約12カ月であり、調査場所は、首都圏の産科と小児科を要する病院6箇所である。研究対象は、分娩後の日本人の女性であり、調査内容は、研究協力への同意が得られた女性への質問紙調査と医療記録からの情報の抽出である。なお分析にあたり、傾向スコアを用いて、共分散分析および層別解析を施行し交絡因子の調整を行った。 結果 2810名の女性を分析の対象とした。冷え症と早産では、冷え症でない妊婦に比べ、冷え症である妊婦の早産発生率の割合は、3.38倍(共分散分析)もしくは3.47倍(層別解析)であった(p<0.001)。前期破水では、冷え症である妊婦の発生率の割合は、1.69倍(共分散分析)と1.7倍(層別解析)であった(p<0.001)。微弱陣痛は、冷え症である妊婦の発生率の割合は、1.95倍(共分散分析)と2.01倍(層別解析)であり(p<0.001)、遷延分娩発生率の割合は、2.37倍(共分散分析)と2.44倍(層別解析)であった(p<0.001)。なお、弛緩出血では、冷え症でない妊婦に比べ、冷え症である妊婦の発生率の割合は、1.22倍(共分散分析)もしくは1.29倍(層別解析)であり、冷え症の有無での明確な有意差はなかった(p=0.07)。
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