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2011 年度 実績報告書

惨事ストレスを被った看護職員に対する危機後の支援方法の構築

研究課題

研究課題/領域番号 22592536
研究機関筑波大学

研究代表者

三木 明子  筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30315569)

研究分担者 松井 豊  筑波大学, 人間系, 教授 (60173788)
キーワード惨事ストレス / 暴力 / 被害者支援 / 看護職員 / メンタルヘルス / PTSD / 職員教育 / 院内暴力対策
研究概要

1.救急領域の看護職員の惨事ストレスの実態とその影響の検証
看護師(351名)が被る惨事ストレスのうち、精神的に衝撃を受けた出来事として、「家族からの暴力(OR=2.84,95%CI:1.24-6.49)」「成人の心肺停止(OR=1.97,95%CI:1.08-3.61)」「交通事故(OR=1.87,95%CI:1.01-3.48)」を経験した看護師は、PTSDハイリスク者(IES-R25点以上)が有意に高かった(研究(1))。救急領域の医師(147名)では、「性犯罪による外傷」「小児の心肺停止」等の経験者にPTSDハイリスク者が有意に高く、職種によりPTSDと関連する惨事ストレスが異なることを示した。
2.PTSDハイリスク者の事例の分析
救急外来に勤務する看護師42名のうち、PTSDのハイリスク者(IES-R:27~55点)は4事例が該当した。
異動後1~4年目までの看護師で、「死体を見た・触れた」「患者や家族とトラブルになった」経験を有していた(研究(2))。医療安全の視点から、看護師のPTSDハイリスク者をスクリーニングし、必要な支援を提供する必要を示した。
3.研修会に参加した看護職員の惨事ストレスの実態とその影響
4会場の研修会の参加者358名に質問紙を配布し、304名より回収した(84.9%)。惨事ストレスで経験頻度の高かった出来事は、「職員からの暴言・脅し(44名,14.5%)」、「患者からの暴言・脅し(41名,13.5%)」、「成人患者の急変・心肺停止(36名,11.8%)」等の順であった。先行研究の結果(保健師、消防職員、海上保安官)と比較し、研修参加者のPTSDハイリスク者が31.3%(95名)と高いことを示した(研究(3))。
4.惨事ストレスの経験とPTSDハイリスク者が多い職場の選定(診療科別比較)
6病院3353名の看護師に質問紙を配布し、2528名より回収した(75.4%)。強いストレスを伴う出来事は、「成人患者の急変・心肺停止(271名,10.7%)」「患者からの暴言・脅し(227名,9.0%)」等であり、PTSDハイリスク者は23.9%(603名)と高かった。診療科別のPTSDハイリスク者の割合は、救命救急センター17.3%(56名)(研究(1))、ICU・CCU・MCU30.4%(68名)、手術室26.2%(34名)、一般病棟24.0%(384名)、精神科病棟23.8%(59名)、外来19.8%(52名)等であり、集中治療室が最も高い結果であった(研究(4))。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

調査予定の複数の病院施設が東日本大震災の影響を受け、調査実施が困難または調査開始時期が遅れたが、最終的には2年間で看護師の惨事ストレス調査として、4,202人に調査票を配布、3,242人から回収を終えた(研究1)。職員の自殺、患者からの暴力、患者の急変等の惨事ストレスを被った看護職員にインタビューを実施したが、協力者が目標数に満たず、質的分析には至らなかった。しかし、組織の支援体制が十分でない課題が明確となり、追加インタビューは不要であった(研究2)。全国の看護管理者に危機後の支援体制の実態調査(研究3)を予定していたが、計画を変更し、約54施設の看護管理者(看護部長、副看護部長)、病院長、医療安全担当者等、70名程度のヒアリングおよび意見交換を行い、現場の惨事ストレスの実態把握が不十分で、危機後の支援体制が進んでいない現状の問題を確認した。CVPPP(包括的暴力防止プログラム)を実施している3施設の看護管理者または担当者へのヒアリング調査では、実施上の課題を抽出できた(研究4)。研究の進捗状況はやや遅れているが、調査、ヒアリングの目標数をクリアし、研究目的の達成度としては問題ない。

今後の研究の推進方策

今後は惨事ストレスを被った看護職員の危機後の支援体制構築のためのツールを開発する。具体的には、惨事ストレスを受けた看護職員を支援するためのマニュアルまたはDVDを作成し、啓発教育を行い、ツールの改良を行う計画である。当初、看護管理者向け、スタッフ向けのツールを別に開発する計画であったが、職位別の役割に重点を置くよりも、惨事ストレスを被った看護職員の支援にフォーカスを置くほうが重要であり、1つのツールとしてまとめる。また、ツールの改良はするが、短期での評価は難しいことから、教育的効果については検討しない。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] 救急領域の現場で看護師が被る惨事ストレスの実態と影響2012

    • 著者名/発表者名
      三木明子、黒田梨絵
    • 雑誌名

      日本看護学会論文集看護総合

      巻: 42巻 ページ: 108-111

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 救急救命センターに勤務する看護師のプレホスピタルケアで経験する出来事と職業性ストレスーフライトナースと救急看護師の比較を通して-2012

    • 著者名/発表者名
      黒田梨絵、三木明子
    • 雑誌名

      日本看護学会論文集看護管理

      巻: 42巻

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 東日本大震災で看護活動を行った看護師の惨事ストレスマネジメント2011

    • 著者名/発表者名
      三木明子
    • 雑誌名

      看護部長通信

      巻: 9巻 ページ: 67-72

    • 査読あり
  • [学会発表] 救命救急センターで勤務する医師の惨事ストレスとPTSDとの関連2012

    • 著者名/発表者名
      黒田梨絵、三木明子
    • 学会等名
      第19回日本産業ストレス学会
    • 発表場所
      大正大学巣鴨校舎(東京都)
    • 年月日
      2012-01-27
  • [学会発表] ドクターヘリに搭乗する看護師の特殊環境と身体的・心理的ストレス反応2011

    • 著者名/発表者名
      黒田梨絵、三木明子
    • 学会等名
      第42回日本看護学会看護管理
    • 発表場所
      神戸ポートピアホテル(兵庫県)
    • 年月日
      2011-10-14
  • [学会発表] 東日本大震災における救急外来看護師の緊急時の活動と体制2011

    • 著者名/発表者名
      黒田梨絵、内田里実、三木明子、小野瀬俊子
    • 学会等名
      第35回茨城県救急医学会
    • 発表場所
      つくば国際会議場(茨城県)
    • 年月日
      2011-09-10
  • [学会発表] 救急領域の現場で看護師が被る惨事ストレスの実態と影響2011

    • 著者名/発表者名
      三木明子、黒田梨絵
    • 学会等名
      第42回日本看護学会看護総合
    • 発表場所
      シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル(千葉県)
    • 年月日
      2011-09-09
  • [学会発表] 東日本大震災で被災した救急外来に勤務する看護師が被る惨事ストレスの実態-PTSDハイリスク者事例の検討-2011

    • 著者名/発表者名
      黒田梨絵、三木明子
    • 学会等名
      第49回日本医療・病院管理学会
    • 発表場所
      学術総合セミナー(東京都)
    • 年月日
      2011-08-21
  • [学会発表] 救急現場で医師が被る惨事ストレスの実態2011

    • 著者名/発表者名
      三木明子、黒田梨絵
    • 学会等名
      第49回日本医療・病院管理学会
    • 発表場所
      学術総合セミナー(東京都)
    • 年月日
      2011-08-21

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公開日: 2013-06-26  

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