本研究の最終年度である今年度は、まず「日本と米国の高齢者へのインタビュー」を実施した。12名の日本人と8名の米国人(計20名)にインタビューし、その結果本研究で目標としていた30名を超える31名の高齢者へのインタビューを実施することが出来た。日米の高齢者がもつスピリチュアリティに対する認識やスピリチュアリティと彼らの健康・健康増進行動との関係について経験や意見を聞き取り、概念の理解をさらに深めることが出来た。 次に、日米でのインタビュー結果を解析ソフトNVivo10にて分析し意見をコード化・分類した。両国に共通したコードを同定・統合し計25の項目を選定した。この25項目について3名の日系アメリカ人高齢者とともに表面的妥当性を確認後、探索的因子分析(主因子法プロマックス回転)を実施し、5因子19項目の尺度を開発した(回転後の累積寄与率:51.2%)。5因子を「崇高・大きな力の源とのつながり」、「他者との関係」、「意志力」、「人生の意味」、「守護の感覚」と命名した。項目-全体相関係数は0.42、因子間相関係数は0.23~0.59で有意な正相関がみられた。クロンバッハα係数は各因子0.65~0.87、尺度全体0.79で内的整合性が確認された。日本語の尺度は英訳し英語版尺度も作成した。 以上により、日本と米国で使用できる「スピリチュアリティ尺度」(初版)が開発された。しかしながら本研究では、質的インタビューの対象者が日・米ともに限局された地域の住人でかつ少人数であったこと、データ処理での概念統合によりもともとの発言の意味が損なわれた可能性等の課題がある。これらを改善しより信頼性・妥当性の高い尺度にする為に、今後の研究では、より広範囲な地域から多様な属性の対象者の意見を聞き取り尺度の項目を確保し、さらに確認的因子分析により高いモデル適合度が確認できるよう尺度を精査する計画である。
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