平成17年度から医療的ケアを必要とする児童生徒の安全な通学を確保するために特別支援学校に看護師(以下、学校看護師)が配置されているが、非常勤であることが多く、職場内研修も限られているため、自主的研鑚によるスキルアップが求められている。学校看護師の活動基盤づくりと専門性を高めるための支援モデルの開発が必要と考えられた。 そこで、平成22年度は、その基礎的資料を得るために質問紙調査を行うことにした。対象は肢体不自由・病弱と表示している東海・近畿地方の113の特別支援学校看護師とした。学校長宛てに本研究の趣旨及び倫理的配慮についての説明文と自記式調査票を郵送し学校長から学校看護師に調査票の配布を依頼した。返送をもって学校長と学校看護師の同意が得られたこととした。調査票は、属性、障害児ケアの経験、看護実践力に関する27項目、看護師の専門性、他職種との連携および専門性を高める学習・研修に関する30項目と自由記述で構成した。各項目は、日本小児看護学会発行の特別支援学校看護師のためのガイドラインを参考に独自に作成し、「3:一人で判断して自信を持ってできる」から「4:できない」の4段階リッカート法で回答を求めた。 有効回答数は102名(79.6%)、回答者の平均年齢は43.8±9.04歳であった。看護職平均経験年数は17.2±9.31年、うち学校での平均経験年数は3.5±2.65年であった。学校看護師になる以前に障害児ケアに関わった経験者は33名(32.4%)、無は69名(67.6%)であった。分析の結果、以下のことが明らかとなった。 1. 学校看護師経験年数や障害児ケア経験の有無による看護実践能力差が明らかになった。特に障害児ケアの経験がなく学校看護師になった直後の人に対しては、児童の安全を守るために呼吸管理や抗痙攣薬に関する研修支援の必要性が示唆された。 2. 医療的ケアを担う看護師の周囲の人との関係では、保護者や医師との直接的接触は行いにくく、三職種間での医療的ケアへの共通理解や情報の共有は十分な状況とはいえない状況であった。
|