1.研究の目的:がん医療における緩和ケア・在宅医療連携システムモデルの構築のための現状と課題を明らかにする。 2.研究実施計画:研究実施計画では、在宅医を対象とした面接調査であったが、地域における緩和ケアシステムを構成する組織・機関に所属している人材へと対象と拡大し、急性期病院医師、退院調整看護師、緩和ケア病棟医師、在宅医、訪問看護師、行政職員、NPO団体への半構成的面接調査を実施した。 3.研究の成果:対象地域の選定のため、5地域の緩和ケア連携について、フィールドワークを行い、それぞれの取り組みを把握した。がん患者が在宅医療を選択でき、在宅での看取りが実施できるための在宅緩和連携システムが確立され、さらに在宅緩和ケアの推進・在宅がん患者のQOU向上を目的とした先駆的なNPO活動が行われている2地域を選定した。緩和ケア連携システムが発展した要因としては、(1)最終的受け皿となる緩和ケアを実施できる在宅医、訪問看護師の存在があること、(2)緩和ケア病棟医師が患者・家族の希望を確認し症状コントロールを行い、在宅に帰るタイミングを見逃さないこと、(3)緩和ケア病棟が在宅療養の後方支援を担っていること、(4)緩和ケア病棟医師が在宅医と共に緩和ケアを実施することにより緩和ケアのスキルアップが図られていること、(5)訪問看護師と在宅医が連携を図り在宅の看取りが実施されること、(6)在宅での看取りに関する市民を対象とした教育活動が実施されていること等があげられた。在宅緩和ケアへの移行への課題としては、(1)急性期病院の医師は治療に熱心であるがゆえに積極的治療から緩和ケアおよび在宅療養への移行へのタイミングを掴むことが困難であること、(2)患者・家族の死に対する受け止める力が未熟であるために、最期の過ごし方を選択できないこと等があげられた。
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