これまでの本研究の調査結果から、緩和ケア推進のための在宅医療連携システム構築支援について検討した。 緩和ケアにおいては、緩和ケアトライアングルとしての「急性期病院」「緩和ケア病棟」「在宅医療」の場の移行がスムーズであるために、それぞれの医療のリーダーである医師間の連携と、それぞれの場における患者・家族,医師との調整役を担う看護師の役割が重要であることが示唆された。 「在宅医療」と「緩和ケア病棟」は、がん患者の苦痛を和らげQOL改善する患者・家族の生活を「支える医療」であるのに対し、急性期病院ではがん治療としての「治す医療」であることから、ケア目的の転換が必要となっており、このシステムのケア目的の転換の必要性をシステムに携わるすべてのメンバーが共通認識できる支援の必要性が示唆された。その背景には、急性期病院は医療中心であるため、医師を頂点とした縦関係であるのに対し、緩和ケアにおいては患者・家族の生活を支える視点のため、患者を中心とした多職種間が横の関係でつながっており、在宅においては多職種間の連携がなくては、緩和ケアの提供が成立しないという実態があった。 在宅緩和ケアシステム構築のプロセスにおいては、患者・家族を支えながら自らが多職種に支え、支えられた成功体験の積み重ねによってネットワークが強化されていることが示唆された。また、在宅緩和ケアシステム構築のための促進要因としては、NPOによる市民巻き込んだ先駆的な活動が地域における緩和ケアの広がりを強化しており、行政機能として、緩和ケアの実態を把握し、必要な活動の事業化、多機関をつなぐ場の設定等、地域緩和ケア提供者の活動基盤を支える重要性が示唆された。
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