研究概要 |
本研究の目的は、家族と介護老人保健施設(老健)のケア職者が「相互に協力する意思をもち役割を遂行(協働)」することにより、在宅生活を望む要介護高齢者が在宅生活を継続できるように在宅支援指標を開発し検証することである。23年度の目的は、老健の各ケア職者の在宅支援内容・方法に関する家族の認識を明らかにすることである。 研究協力に同意した4老健における「在宅介護の意思を有し,当該老健の在宅支援を利用し在宅介護を行っている家族(家族)」の紹介をもとに,計10人の研究協力者に個人面接調査を行った。 利用者の性別は男性2人・女性8人,年代は60代1人,70代3人,80代5人,90代1人、要介護度は1・2各1人,3は2人,4は4人,5は2人であった。認知症を有する者は6人,認知症高齢者の日常生活自立度はI・IIb各1人,IIIa3人,IIIb1人であった。家族の性別は男性2人・女性8人,年代は40代1人・50代3人・60代3人・70代2人,80代1人,利用者からみた続柄は妻2人,夫2人,娘3人,嫁3人,就業者は4人であった。健康状態は特に問題なし3人,治療中7人であった。在宅介護の選択理由は3つに分類され,これまで世話になったことへの恩返し,利用者の意向の実現,家族の介護役割の遂行であった。 老健の継続利用の理由は,共通して,利用者の特性と老健の物理的環境,他の入居者の特性および雰囲気との適合,利用者の入居生活に対する満足であリ,利用者の意向・利益を優先していた。また在宅の継続に向けて自分の個人生活と介護の両立の意向をもち,老健の在宅支援に対し,介護に関する疑問や問題の相談・解決,利用者の意向に関する情報の獲得等の効果を認め,問題点は緊急短期入所の必要な時の利用困難等であった。老健の在宅支援として,家族の介護負担軽減とともに介護者の生活状況に沿った支援が重要であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
在宅介護の意思のある家族に関し、利用者の年代,性別,要介護度,認知症の重症度,家族の性別,年代,続柄,仕事の有無,健康状態に偏りない協力者を選定し,老健のケア職者の支援に対する認識を把握できた。本年度の計画に対し,老健のケア職者が配慮・工夫していた在宅介護の意思決定前の家族・利用者に対する調査が課題として残った。
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今後の研究の推進方策 |
施設長が在宅支援の強化に取り組む方針を示し、全国平均に対して在宅復帰率が高く、平均入居期間が短く,在宅支援に組織的に取り組んでいるとみなせる老健のケア職者の実践をもとに,在宅支援指標案を作成する。在宅支援指標作成の第1ステップとして,23年度の家族調査から得た結果により検証し,家族が認識する課題を新たに指標に加え,同様の特性の家族に追加調査を実施し,在宅介護の意思を有する家族に対する支援指標を完成する。第2ステップとして、意思決定に対する支援について検討する。
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