研究課題
本研究の目的は、統合失調症の早期発現・早期治療を目的としたもので、疾患の好発期にある中学生・高校生を持つ親に統合失調症を正しく理解してもらい、精神保健福祉サービスへの援助希求を速やかに行ってもらうための教育啓発メディアを開発していくものである。そのために研究者は、統合失調症に関する中学生・高校生を持つ親の意識の発掘を行った。まず、知識を調査するための質問票2種類を開発した。ひとつは基礎知識を調査するもので、もうひとつは「統合失調症」「他の精神疾患」「身体疾患」「困った行動をとる人」の違いを正しく判断できるかどうかを調査するための質問票である。その上で、「属性アンケート」「リンクスティグマ尺度日本語版」「SDSJ尺度」とともに、対象者2690名に対してインターネットアンケート調査を実施した。また研究者は知識普及を目的とした教育啓発メディアを考案した。これは「統合失調症の症状」「原因」「治療」「経渦と予後」「相談先」を柱とし、援助希求が行われやすいよう「病気のサイン」「相談先」「守秘義務」を強調し制作した。統合失調症に興味のない対象であることを想定し、視聴時間を13分間に設定、アニメーションを用いて視覚に訴え、音声での解説を加えて、我が子とリンクして考えられるよう構成した。この教育啓発メディアをアンケート調査後、対象者全員にインターネット上で視聴してもらい、1週間後に同様の調査を実施し、効果を検証するためのデータを収集した。この結果、「統合失調症の症状」と「前駆症状」の判別率が低く、偏見の度合は中程度で、子の異変時に学校へ相談を希望する者が最も多く、医療機関では心療内科への受診を希望する者が最も多かったことが示された。今後は、教育啓発メディア視聴後のデータを分析し、効果を検証する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
BMC Public Health
巻: 11:323