研究課題/領域番号 |
22592581
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉井 初美 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10447609)
|
研究分担者 |
赤澤 宏平 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (10175771)
寺島 健史 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (00377160)
後藤 雅博 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90334656)
北村 秀明 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (00361923)
渡部 雄一郎 新潟大学, 保健管理センター, 講師 (90401744)
|
キーワード | 精神看護学 / 早期発見・早期治療 |
研究概要 |
本研究の目的は、統合失調症の早期発見・早期治療を目的としたもので、疾患の好発期にある中学生・高校生を持つ親に統合失調症を正しく理解してもらい、精神保健福祉サービスへの援助希求を速やかに行ってもらうための教育啓発メディアを開発していくものである。 H22年度に、中学生・高校生を持つ親2690名を対象とした統合失調症に関する意識調査、すなわち、「統合失調症に関する基礎知識」「統合失調症や前駆症状を他の疾患や思春期の行動と区別する能力」「統合失調症に対するスティグマ」「症状出現時の援助希求行動」に関する調査を実施した。H23年度は、研究者らが考案した統合失調症に関する知識普及を目的とした教育啓発メディアを、同じ対象者に実施し、そこから得られた視聴後調査結果を解析することで、その効果を検証した。この教育啓発メディアは、「統合失調症の症状」「原因」「治療」「経過と予後」「相談先」を柱とし、援助希求が行われやすいよう「病気のサイン」「相談先」「守秘義務」を強調し制作したものである。統合失調症に興味のない対象であることを想定し、視聴時間を13分間に設定、アニメーションを用いて視覚に訴え、音声での解説を加えて、我が子とリンクして考えられるよう構成し、ウェブベース上で実施した。 教育啓発メディア視聴後、統合失調症に関する基礎知識が向上し(P<0.001)、「統合失調症の症状」と「前駆症状」の判別正解率が向上した(P<0.001)。また、子が「引きこもり」「奇妙な行動」「引きこもり・奇妙な行動・不眠」の症状出現時に、1週間以内に医療を求める親が増加した(p=0.001)。更に、スティグマ程度に変化は見られなかったが、スティグマに関連する人口学的特性として「世帯所得」と「職業」「統合失調症の人が身近にいるかどうか」「福祉活動への参加の有無」が示された(p<0.05)。これらの調査結果は、我々の教育啓発メディアが、中学生・高校生を持つ親の統合失調症に関する知識の向上、および、子の精神症状出現時に医療を求める行動の促進に役立つことを示唆するものだった。我々は、研究結果を英文論文にまとめ、精神医学関連の国際学術雑誌3本に発表した。更に国外の学会で発表し研究成果を広く普及させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H24年度内の計画を1項目残すのみである。達成内容を以下に示す。 <H22年度> 1.「統合失調症に関する知識」「早期発見・早期治療」「スティグマ」「社会的距離」の定義の明確化。 2.文献調査に基づく「統合失調症に関する知識普及」「早期発見・早期治療」「スティグマ」「社会的距離」の実態発掘。 3.統合失調症に関する中学生・高校生を持つ親の意識の発掘。 4.教育啓発メディアの考案。 <H23年度> 1.教育啓発メディア確立のためのデータ抽出。 2.介入群に実施した教育啓発メディアの数理学的解明。 3.教育啓発メディアの有用性を統計学的に評価した。 4.研究結果を英文論文にまとめ、精神医学関連の学術雑誌3本に掲載。国外の学会で発表し研究成果を広く普及させた。
|
今後の研究の推進方策 |
1.教育効果の無い対象の数理学的特定。 2.援助希求と社会的距離との関係の解明(社会的距離の大きい人の援助希求ルート)。 3.開発した質問紙の信頼性・妥当性の検証。 4.教育啓発メディアのあり方と方法についての検討。 1)アンケートで得られた結果から「知識不足」の項目と「精神保健福祉サービスへの援助希求が遅延」している項目をピックアップし、関連を統計学的に評価しWeb上でのシステム設計に生かす。 2)プロトタイプのシステムを作成し、子どもを持つ大学内職員に試用してみる。 3)教育啓発メディアの有用性を統計学的手法で評価する。 4)教育啓発の実施を繰り返すことで改変を重ね、完成させる。 5.「知識普及」と「スティグマ軽減」の両方を教育啓発メディアに盛り込むかどうかの検討。 6.研究結果を英文論文にまとめ、精神医学関連の学術雑誌に投稿する。投稿後に、国内、国外の学会で発表し研究成果を広く普及させる。
|