研究概要 |
本研究は、統合失調症の早期発見・早期治療を目的としたもので、疾患の好発期にある中学生・高校生を持つ親に統合失調症を正しく理解してもらい、精神保健福祉サービスへの援助希求を速やかに行なってもらうための教育啓発メディアを開発した。全国の中学生・高校生の親2,690人(男性1,381人、女性1,309人)を対象とし、統合失調症に関する「知識度」「判別度」「スティグマ程度」「援助希求経路」「受診時期」等を前方視的に調査し、それぞれの関係性や属性間との比較を評価することで実情を明らかにした。その結果、統合失調症の基礎知識については、77%の対象者が正しく答えられた。統合失調症の症状を正しく認識できたのは47%、前駆期症状を正しく認識できたのは30%だった。また、対象者の偏見度は中程度だった。症状出現時に「心療内科」を受診させると答えた対象者が50%と最も多く、「精神科病院」を受診させるのは17.3%と最も少なかった。また、精神科医療を受けさせないと答えたのは、若い年代で低所得層だった。 教育啓発メディアは、統合失調症の基本的知識に関するナレーション付きのスライド12枚をウェブにより視聴する教育啓発プログラム(13分間)を開発し、対象者はこれを視聴した。上記の調査を教育啓発プログラムの視聴1週間後に再び実施し、プログラムの効果を検証した。 その結果、教育啓発プログラムの実施により、統合失調症に関する基礎知識の正答率は増加し、症状・行動の判別率も増加した。更に、子どもに統合失調症の症状や前駆症状が出現した際に医療を受けさせる対象者が増加し、受診時期も促進された。 我々が開発した統合失調症の基本的知識に関する教育啓発プログラムは、疾患に関する知識および判別率の向上や援助希求の促進に効果が得られ、統合失調症の早期発見・早期治療に貢献できることが検証された。
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