本研究の目的である「認知症高齢者への看護ケアプログラムを開発」のための準備段階として、認知症高齢者の「持てる力」を活用したケアに関する文献検討を行った。先行研究から、介護保険施設等で成果が確かめられているケアの方法を病院でも実施できないかを試してみる段階であることが示唆された。本年度、岐阜大学活性化経費(地域連携)の助成が得られたこともあり、急性期医療現場で認知症高齢者のケアを実施している看護師と、介護の現場で認知症高齢者と関わりをもつ看護職等の人を交えて、ワークショップ「入院加療中の認知症のある高齢者の看護を考える」を開催した。公募により41名の看護師が参加した。1日目は専門医師、認定看護師、看護・介護の現場で働く看護師、家族の会の代表らの協力を得て、認知症の医療およびケアに関する最新の話題を提供した。2日目は20名の看護師が参加し、認知症のある高齢者への看護の実態や今後の目指す方向性についてのグループワークを行った。1日目終了後、ワークショップへの関心度等に関するアンケート調査を実施した結果、参加した看護師全員が、「認知症高齢者に対して正しい理解をし、これまでのイメージを払拭していかねばならない」という思いで参加し、今回の話題提供で、認知症への新たな理解が深まったという回答をしていた。2日目のグループワークの討議内容については、逐語録を作成し、内容を整理した。その結果、急性期医療現場で認知症高齢者へのケアは、看護師の否定的感情に支配されている傾向が強い。それが、認知症高齢者へも悪影響となり、そのことで看護師自身も悩んでいること。高齢者に応じたケアがなされていたとしても、個々の看護師の経験に任されている状況で具体的な方法を見出すまでには至っていないことが明らかとなった。また、このワークショップで介護の現場で働く看護師と、認知症看護認定看護師から「見守り業務」の役割、業務の有効性等の紹介があり、参加した看護師にはケアの方向性を見いだす機会になったという看護師も多かった。「認知症高齢者への看護ケアプログラムを開発」のためには有効な準備ができたと考える。
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