研究課題/領域番号 |
22592584
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
松波 美紀 岐阜大学, 医学部, 教授 (40252150)
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キーワード | 看護学 / 認知症 / 高齢者 / 急性期医療 / 持てる力 / ケア方法 |
研究概要 |
23年度は、まず、22年度途中になっていたワークショップ「入院加療中の認知高齢者の看護を考える」に参加した一般病院で働く看護師の「認知症看護への思い」等をまとめ、参加者に冊子として、またその際看護師に行った質問紙調査の結果をまとめ、岐阜看護研究会誌に発表した。 次に、急性期医療現場での認知症高齢患者へのケアの実態を明らかにするために、県内のC病院とH病院に、そしてそこに所属する認知症看護認定看護師に研究への協力を依頼し承諾を得た。病棟看護師から認知症看護認定看護師のもとに寄せられる認知症高齢者との日常的な関わりの中で「対応に苦慮している」と相談があった事例に対して、事例提供者、認知症認定看護師、老年看護学分野教員(研究者を含む)が参加して事例検討会を実施した。寄せられた事例は平成23年8月から12月の間に8事例であった。いずれの事例も、看護師から提供される情報は対応に困った場面の状況の羅列にすぎなく、その人を理解するために必要な生習慣等に関する情報や対応に困っていないときの情報はほとんどなく、ケア方法を見いだすところまでに至らないものばかりであった。そこでその中の1事例「注意障害等があり、食事の摂取量が不足している患者」については、患者、その家族の協力も得て、ケアするに必要な基本的な情報を追加し事例を整理し、『一般病院で働く看護師とともに、入院加療中の認知高齢者の看護について事例検討会』を岐阜大学大学院医学系研究等倫理審査委員会の承認を受け開催した。また、岐阜大学活性化経費(地域連携)の助成を得て、県内の看護師と3名の認知症看護認定看護師へも参加を募った。当日は50名の参加者があり、「食事摂取量を増やす」という目的に向け、不足する情報は何か、実際にどのようなケアをするか、という視点で活発な意見交換がされた。公募であるため、元々認知症に興味がある看護師が参加していた可能性はあるが、ケアについても数々のアイディアが示された。このような検討会では、認知症高齢患者への具体的で可能なケアが考えられるにもかかわらず、日常の看護場面では、それが生まれてこない。このあたりに大きな課題があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ケアプログラムを開発していくには、もう少し事例検討会をする必要がある。病棟の看護師からの事例の提供は月に2~3件あるが、メンバーがそろった事例検討会の開催が日程の調整上困難である。
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今後の研究の推進方策 |
当初、22年度は看護師、介護職の食事の場面を観察してケア方法を分析する予定であったが、事前の調査で、実際の食事介助場面では、患者(あるいは利用者)に応じ、ケア実践者はさまざまな工夫をして介助していた。 事例検討の中で、急性期医療の現場で認知症高齢患者への食事介助などがうまく進まない理由として、1日の生活の中での食事をとらえることができていない、その人にとっての食事の意味まで考えられていない、その人の元々の習慣等の情報が不足したままケアが進められていることなどが考えられた。また、病棟のルーティーンのケアに、認知症高齢患者の生活を当てはめようとしているところに課題があることが示唆された。そこで、事例検討を重ねながら、認知症がある高齢患者のそれぞれの状況と、ケア方法との関連性を考えていく方法に変更した。事例検討を積極的に実施している研究メンバーを追加する。
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