24年度は、23年度に岐阜大学活性化経費(地域連携)の助成のもとに実施したワークショップ「入院加療中の認知症高齢者の看護を考える-事例検討会」で検討された事例(食事摂取量が不足しているにもかかわらず、ケアを拒否するアルツハイマー型認知症を有する89歳の女性入院患者)について、ケア上看護師が注目した点、さまざまな工夫を凝らしたケア方法に関する意見交換の実態、このような事例に必要な情報とは何か,等について分析し報告した。 また、平成23年度に引き続きH病院で開催される事例検討会に参加した。事例検討会では、認知症に関する知識、技術を元に、認知症高齢者がなぜそのような行動をするのかを考えるという、肯定的に評価する視点をもって検討することができた。しかし、事例検討会では種々の方法が見いだされるにもかかわらず、日々のケアでは十分実践されていかない現状も明らかになった。 最終年度として、23年度から実施してきた事例検討会の内容を分析した。急性期医療現場において認知症高齢患者のケアは、個々の看護師の認知症に対する理解度によりケア内容は異なる状況であること、患者の「持てる力」が情報として挙げられることは少ないこと、等が明らかになった。また、一部の看護師が認知症高齢患者の「持てる力」に気付いても、病棟でチームとしてケアに活かせていないことがわかった。 そして認知症高齢患者の「持てる力」の活用に関するエビデンスを明確にすると同時に、「持てる力」を把握することで、看護師の認知症高齢患者に起きている事態の解釈が異なり、事態も好転するというプロセスをチームで共有し、実践の場で取り組めるようにしていくことが必要であることが示唆された。 今後は、チームで「持てる力」に関する情報を共有する方法を確立する。その情報を基に、ゴールを明確にしたチームケアを実践し、その効果を明らかにしていきたいと考える。
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