研究課題/領域番号 |
22592594
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研究機関 | 青森県立保健大学 |
研究代表者 |
藤井 博英 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (60315538)
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研究分担者 |
清水 健史 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (80438077)
伊藤 治幸 青森県立保健大学, 健康科学部, 助教 (70457737)
藤田 あけみ 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (30347182)
入江 良平 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (60193702)
大山 博史 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (10340481)
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キーワード | 自死遺族 / グリーフワーク / 民俗信仰 / イタコ / サポートシステム / カミサマ |
研究概要 |
本研究目的は、自死遺族のグリーフワークにおいて、青森県に特徴的な民間信仰である「イタコ」や「カミサマ」が自死遺族と死者とのコミュニケーションの仲介となる「口寄せ」により、どのように効果的にサポートができ、悲嘆を乗り越えることができたかを明らかにし、対照群として「イタコ」や「カミサマ」のサポートを受けていない自死遺族の悲嘆からの回復過程と比較することでより明確にしていくことである。 本研究代表者は、文部科学省の補助金を得て本研究を行うことを新聞、テレビ等の媒体を通じての広報活動を行った。また研究者は広報活動とは別に、「イタコ」を訪れた一名の自死遺族のインタビューを行った。その内容の概略は下記の通りである。 山形在住の60代女性である。女性は、1年半前に自宅で経死した30代息子を自ら発見している。亡くなってから1年後に恐山を訪れ、八戸で「イタコ」に口寄せをしてもらった。口寄せをしてもらった動機は、「何故死なせてしまったのか」という自責の念である。息子の「先に逝ったことを許してほしい」、「あの世ではいいところにいる」という「イタコ」の「口寄せ」(死者の言葉)をA氏は期待した。しかし、「イタコ」の「口寄せ」は、「あの世での居場所がない」「うろうろしている」であり自分の望んでいる言葉と合致せず、「癒やし」にはならなかった。私もあの世に行って一緒にいれば安心できるのではないかと、後追い自殺も考えていた。 A氏は、自死遺族の会や個別相談会、精神科医による相談などに参加しているが、いずれも自分の期待している効果は得られないと感じ、自分の気持ちを理解できる人はいないと周囲に対して攻撃的な面もある。さらに息子は、心療内科に長く罹っており、A氏は一緒に戦ってきたのに裏切られたように感じている。感情が高まった時にA氏は、雑記帳に息子に語りかける内容で書きつづり落ち着きを取り戻している。立ち直るには、時間をかけ、自分を自分でケアするしかないとやや諦めの状況であった。 また東北各地の巫女(岩手と宮城の「オガミサマ」、山形「オナカマ」、福島「ミコサマ」)の協力から自死遺族のインタビューを計画したが東日本大震災に伴い平成22年度のデータ収集は、一名のみであった。
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