今年度は、2つの研究フィールドにおいて看護職と筆者の協働による在宅アクションリサーチおよび海外調査を実施した。A病院(一般内科・外科)では、7事例(内、療養者2事例は調査後2か月以内に死亡)の調査を実施した。7事例の共通性は、(1)複数の家族員が在宅介護および医療的ケアに参加している、(2)訪問看護師が身近な相談窓口となっている、(3)往診を利用している、(4)退院後、比較的早期に医療・介護サービスを再調整しており、訪問看護師が関与しているケースが多い、(5)家族は入院中に看護職から在宅介護の受容に至る意思決定支援を受けている、(6)療養者と家族のうち主介護者はこれまでの関係性によって、支え・支えられる関係を保っている、(7)病棟看護師による患者・家族教育の成果が発揮されている、(8)家族は在宅介護について創意・工夫を凝らしている等であった。また、B病院(回復期リハビリテーション病棟)では、5事例の調査を実施した。5事例に共通性は、(1)訪問介護および看護サービス等の在宅サービスは利用せず、通所サービスを優先的に利用している、(2)入院レベルのリハビリテーションの質担保および継続を願っている、(3)療養者・家族共にさらなる機能回復を希望している等であった。病院の入院医療から在宅に移る場合のハイリスク事例の条件は、上述の知見を綿密に分析して結果を提示する予定である。また、入院患者と家族への縦断的支援プログラムの試案は、20事例の目標達成後に作成する見通しである。なお、日本訪問看護振興財団主催の「開業看護師の実情と在宅入院(HAD)サービスを視察するフランス訪問看護事情視察団」に参加し、看護師との同行訪問、HADスタッフ、開業看護師等のレクチャー・質疑応答により現状把握のためのデータ収集を行った。来年度にむけて、さらなる文献検討を含め、フランスとの比較から、わが国の医療および介護サービス・制度等の特徴を明確化することが課題である。
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